プラットフォーム戦略の正しい理解が企業を成功に導く
◾️あらためてプラットフォーム戦略を問う
2000年代の終わり頃から、特にIT業界を中心として、市場の構造、およびそこでの勝利条件が急速に変化していることを実感するようになった。これは、遠からずIT業界の枠を超えて、広く市場全体に構造的変革を迫るほどの、時代のターニングポイントと言っても過言ではない、重要な変化であった。しかしながら、当時は、事の重要性が正しく理解されたとは言えず、扱いも地味だった印象がある。それどころか、特に日本では、未だに本当に理解している人は、それほど多くないと言わざるをえない(何より、理解している人としていない人の分断が甚だしい)。今回は、そこのところを主題にして、今後の展望についても述べてみたい。(特に、最近翻訳されて出版された「プラットフォーム革命ー 経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、作られるのか」*1 がちょうどこのトピックを扱っていてわかりやすい事例もあるので参照させていただく。)
◾️インターネットバブル崩壊からプラットフォーマー台頭まで
私の指摘する市場構造の変化は、インターネットが寄与するところが非常に大きいのは言うまでもないのだが、その点では、95年のマイクロソフトのウインドウズ95導入を契機として盛り上がった、インターネットによって市場もビジネスの法則も劇的に変化するという議論のほうが、もっと賑やかで多くの人を魅了していたように思う。確かにここには非常に大きな可能性があることは誰にでもわかったから、当時も「インターネット革命」として喧伝され、特に米国では非常に多くの有為の人材が集結し、莫大な資金がつぎ込まれた。だが、この賑わいは長くは続かず、2001年頃にはあっけなくバブルとしてはじけてしまう。いわゆる「ドットコム・バブル(インターネット・バブル)」である。
それからしばらくは、今にして思うと、現在~今後の市場の動向を予測するにあたっても大変参考になる、興味深い期間となった。バブル崩壊前のインターネットやデジタル化に関わる言説は、やや話題性先行気味で、まだそれを支えるインフラは 貧弱だった。それでも、その可能性に熱狂したイノベーターやアーリーアダプターたちは、マネジメント、ビジネス、製品やサービス、企業の形態、人材等ありとあらゆる分野ですぐに大きな地殻変動と新旧交代が起きることを高らかにうたっていた。(その辺りが特に、昨今の人工知能等の熱狂ぶりにとても似ている。過去の歴史に鑑みると、おそらく一度は失望/あるいはバブルが弾けるような出来事が起こり、その後に本当の勝者が決まっていくことになるのだろう。)
一方、旧世代と名指しされた人たちは不安感を煽られながらも苦虫を噛み潰していた。だから、彼らはネットバブル崩壊に半ば胸をなでおろし、半ば快哉を叫んでいた。私が見た限りでも、当時の多くの日本の大企業などこの典型で、海外でその製品が高く評価されていたメーカーなども、「基本に戻って低コストで高品質なものづくりにまい進することが一番大事」とあらためて自らに言い聞かせているようなところがあった。また、経営戦略として当時もっとも影響力があり、広く企業に受け入れられていたマイケル・ポーターの競争戦略論なども、インターネットの浸透で無用の長物になる、という類の言説も盛んだったから、この機にポーター自身も、ポーターの信奉者も「競争戦略は死んでいない」「戦略の本質は変わらない」との論陣をはって、反抗に出ていた。*2
その日本のメーカー(パナソニック、シャープ、ソニー等)だが、2010年代になると、過去最大規模の赤字を記録することになり、それまで自らの屋台骨を支えてきた製品からも次々に撤退を余儀なくされてしまう。そして、その最大の原因をつくったのが、ネットバブル崩壊後に表に出て来たIT企業であり、そのビジネスモデルだったことはさすがにもう誰にも否定しがたいところだろう。そしてその先頭に立っていたのは、今ではGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と畏敬を込めて略称される巨大IT企業ということになる。
◾️プラットフォーム戦略成立に至る軌跡
GAFAとその追随者の核にあるビジネスモデルは(私自身この頃から何度も述べて来たことだが)いわゆる「プラットフォーム戦略」であり、このGAFAなど典型的な「プラットフォーマー」ということになる。もちろん、ここで敗退したのは日本企業だけではなく、一度は優れた製品で市場を席巻したノキア(携帯電話)やブラックベリー(スマートフォン)等も含まれる。だが、もはやどんなに製品単体としての品質が良くてもそれだけでは如何ともしがたいことは明白だった。ネットインフラやSNS等によって、世界中の部品やソフトウェアの提供者からユーザーまで緊密につながり、コスト低減、品質向上、ユーザー情報の収集、マーケティング・宣伝・販売促進等、すべて外部経済によるレバレッジが効くプラットフォーム戦略の巧者に軍配が上がることになった。しかも、ここでは、マイケル・ポーター流の競争戦略が有効とは言えない場となっていた。ただ、インターネット・バブルで潰えた企業も、インターネットによる販売システム等、インターネットの利用を促進しようとしていた。では、どこが勝ち組となったGAFAと違っていたのか。
インタネットバブル崩壊後に起きていたことを振り返りつつ、象徴的と考えられる出来事を以下の通り、時系列に列挙してみる。
Googleアドワーズ(検索連動広告:広告主向け)サービス開始(2000年10月)
ウィキペディア公開(2001年1月)
トラックバック機能のあるブログフォーマットMovable Type 2.2提供開始(シックスアパート、2002年3月)
Googleアドセンス(検索連動広告:サイト運営者向け)サービス開始(2003年6月)
iPod登場(アップル、2001年11月)
Amazon Web Services(AWS、クラウドサービス)公開(2002年7月)
iTunes Music Store開始(2003年4月)
フェイスブックサービス開始(2004年2月、日本導入は2008年5月)
YouTubeサービス開始(2005年2月)
Twitterサービス開始(2006年7月)
iPhone販売開始(2007年1月~)
Amazon Kindle発売、電子書籍ストア『Kindle Store』を開設(米国2007年11月)
Googleアンドロイド(携帯電話向けソフトウェアプラットフォーム)発表(2008年11月)
この間の出来事を総称するバズワードとして、今ではすっかり忘れ去られてしまった感があるが、「Web2.0」がある。これは「オライリー・メディア」の創設者で、フリーソフトウェアとオープンソース運動の支援者としても知られるティム・オライリーによって提唱された概念で、「旧来は情報の送り手と受け手が固定され送り手から受け手への一方的な流れであった状態が、送り手と受け手が流動化し、誰もがウェブサイトを通して、自由に情報を発信できるように変化したウェブのこと」とされた。この用語自体は、その本質をあまり理解されることなく、2000年の終わり頃には廃語になったとされるが、この現象の背後にある本質を理解して、ビジネスモデルを本格的に再構築して、その強みを最大限生かしたプラットフォームマーとそれができなかった企業との差は劇的に広がることになった。上記のようにあらためて振り返ってみると、GAFAが着々と戦略を展開していたことが浮かび上がってくる。
プラットフォーマーのビジネスモデルは、現代の市場において最強であること、そして、これからさらに技術やビジネスモデルが進歩し洗練されるに従って、あらゆる産業に広がり、市場全体を覆い尽くすだろうことは、私も何度か書いてきたし、今ではわかりやすい解説本も出て来ており、ここまで書いたことが理解できないと感じた人は、それらを参照してみて欲しい。その点、先にあげた「プラットフォーム革命ー 経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、作られるのか 」は特にプラットフォーム戦略に馴染みのない人にはちょうど良い入門書になるかもしれない。また、もう少し上級者向けとも言えるが、プラットフォーム革命ー 経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、作られるのか、著名なIT批評家の尾原和啓氏の「ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?」*3 はプラットフォームの浸透によって変化する消費者の変化にまで言及しており、特に日本市場の特性との関係について言及されているので、続けて読むとさらに理解が深まると思う。
◾️外部経済と双方向性
「ドッドコム企業」でも、新しい市場での勝利条件を理解している企業とそうではない企業には大きな差がある。(2010年代も終盤となった今でも、理解していない企業が非常に多いのはどうしたことか)。「プラットフォーム革命ー 経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、作られるのか 」には、その勝利条件について、わかりやすい事例が出てくる。
米国の「ペット・ドットコム」は、ドットコムバブル崩壊前、ブームの頂点にいた企業とされている。業態はペット関連商品のネットショップだ。現在の視点で見ても、ずいぶん早い段階から適切な市場に目をつけているように見えるかもしれない。当時は、他社に先駆けて各市場で最初に大きくなった企業にはネットワーク効果が働き成功するという言説が幅を利かせ、それゆえに皆、目前の利益より先を争ってユーザー数と認知度の拡大に奔走していた。先行するスケールメリットが七癖を隠す、というわけだ。「ペット・ドットコム」も120万ドルの製作費をかけてスーパーボウルのCMを流しており、それは非常に好評だったという。早期に認知度を上げるという目的は達成したと言ってよさそうだ。
だが、この企業は、結果的に、この時期のドットコム企業の失敗の典型例となってしまった。創業2年弱で3億ドルの調達資金も使い切って破産した。どこが悪かったのだろう。「ペット・ドットコム」は、旧来のビジネスモデル、すなわち、商品を自前でつくり、倉庫を持ち、在庫を抱え、自社が構築する(または契約する)流通ルートで売る、というサプライチェーンはそのままに、ユーザーの購入のインターフェースをインターネット化しただけだった。しかも、ネットショップもまだWeb1.0の時代だから、今日のように、SNS経由で誰かがネットの口コミで宣伝してくれることを期待できるわけではない。さらに悪いことに、まだこの時代にはペット関連用品をネットで購入するという習慣はなかったし、そのインセンティブも自らの利益を削って価格を下げるという程度のことしかできていなかったようだ。仮にこの企業が何とか食いつないで2010年代まで生き残ったとしても、GAFAのタイプのプラットフォーマーが現れれば、簡単に蹴散らされてしまっただろう。
「プラットフォーム革命ー 経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、作られるのか」はこれを直線的ビジネスモデルと呼ぶが、物財としての商品ではなくて、ソフトウェアでも、現代のソフトウェア/ソフトウェアサービス企業のほとんども、価値は企業から顧客へと一方向に流れていく直線的モデルであることを指摘している。このビジネスモデルは、情報も直線的に流れ、トップが売り上げや経営環境の予想をして、それが最終的な生産に反映される。そして、このモデルを高度にシステム化して、大幅な効率化を実現した企業は、20世紀を支配していた(GM、トヨタ等)。
筆者は、これに対して、eBayを例にあげて、現在のビジネスモデルの中核にあって、もっとも成功しているのは、社内に大量の資源をため込みそれを動かす企業ではなく、デジタルインフラを提供して、その周囲にコミュニティを作り、ユーザーと商品提供者の双方を巻込み、巨大な市場(というよりエコシステム)をつくる企業であることを説明している。そこでの活動は、商品や部品提供者(サードパーティ)は世界中に広がった巨大な市場に参入することを意味し、消費者は大量の情報を取捨選択しつつ、世界中から提供されたもっとも品質が良くて、安いものを選ぶことができる。その仕組づくりに成功すれば、プラットフォーマーからすれば「外部経済」が自動的に広がって参加者を無限に増やし、仲介者であるプラットフォーマーに多大な収益をもたらす。そしてそのビジネスモデルの中核エンジンとなる「拡張の秘密」は、Web2.0以降の技術やビジネスモデルがもたらした双方向性にある。
これは今も続くプラットフォーマーの競争の勝利条件として変わることなく現存している。従って、この方向を補強する技術は有効だが、いかに優れた技術でも、この方向に見合わなければ、経済的な成功の栄誉を受けることは難しい。逆に、ここに集う人々のことを理解するために、社会学や心理学、ネットワーク理論あるいは行動経済学等の知見は、非常に有効な武器になりうる。フェイスブックなど、このような知見を最大限有効利用して、金の卵であるユーザーグラフを育て上げた。*4
プラットフォーマーの強みの一つに、ユーザーの大量の情報が流れこんでくることがある。その情報を分析することで、プラットフォームは益々進化し、進化するからユーザーが増加する(それに応じてサードパーティも増加する)、という正のスパイラルが働く。この「激増する情報」を分析する能力は、まさに「ムーアの法則」通りのエクスポネンシャル(指数関数的)な拡張を続けており、情報分析に長けた企業にとっては、情報の価値は指数関数的に増していくことになる。しかも、昨今世間の耳目を集めている、第三世代の人工知能との相性が非常にいい。この人工知能は、大量の情報によって学習(機械学習)することによって、賢くなっていく特性があり、まさにプラットフォーマーとの最良の補完関係にある。このことは、プラットフォーマーとして勝ち残っていくためには、プラットフォームという場に集う参加者(ユーザーやサードパーティー)に価値を提供し続け、参加者を増やし、参加者のさらなる活動を促し、プラットフォームにより多くの情報を残して行く仕組みを洗練させていくことが従来以上に絶対的な条件であることを示唆している。
このように考えてくると、昨今、あらゆるビジネスシーンに非常に大きな変革を迫る可能性があるとされるブロックチェーン技術についても、今後の展開について、ある程度の予測が成り立つことになる。ブロックチェーンは中央管理者不在でも、巨大な「信用」システムを回すことができるため、現在のGAFAのような巨大な中央管理者を必要とするプラットフォーマーのビジネスモデルを駆逐してしまう可能性がありうる、という意見がある。運営コストを下げることができるとも考えられるので、その分を参加者に還元して、参加者を増やすこともできそうに見える。
だが、上記に見る通り、参加者へのインセンティブは価格だけではなく、むしろ、そこで実現できる価値の多様化と継続的でスムーズな価値提供が競争上の決めてとなる。よって、単純に既存の中央管理者をなくしてコストを下げる、という程度の価値提供では、GAFAとの競争を勝ち抜くことはできない。そういう意味では、ブロックチェーン技術は、むしろ企画力のあるプラットフォーマーの強力な部品として、補完的な役割として機能し(それこそコスト低減等に寄与し)市場における、プラットフォームへのさらなる浸透(プラットフォーム化が難しかったり、馴染まなかったビジネスやバリューチェーンのプラットフォーム化)を促進する役割を担うと考えられる。*5 先ごろも、Googleが自社のクラウド事業を支え、対等しつつあるスタートアップ企業との競争をかわすためにブロックチェーン関連の技術に取り組んでいるとの報道があった。*6
だが、プラットフォーム戦略においては、エコシステム全体を外部の攻撃から守り、その価値を継続的に増進していく中心的な存在(プラットフォームマー)が必要であること、そして既存のGAFAのような強力な企業ではないとしても(それこそスタートアップ企業でも)人工知能やスーパーコンピュータを最大限活用してそのような価値提供が可能な者でなければ、今後プラットフォーマー同士の競争に勝ち抜くことは難しいと考えられ、そういう意味では、GAFAが今のところ優位な位置にいることは否定できない。
◾️ポーター流の競争戦略の終焉
プラットフォーマーが市場を覆い尽くすことを前提とすると、マイケルポーター流の競争戦略は今度こそ、そのままでは通用しなくなるだろう。
ポーターの競争戦略では、市場には5つのフォース=競争要因(新規参入者の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力、代替品や代替サービスの脅威、既存企業同士の競争)があり、個別企業は、業界ごとに形成された競争要因を理解して、自社の最適な位置(ポジション)を見つけてその役割を最適に振舞うものが勝つと説く。そこから3つの戦略(コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略)があるとする。
だが、プラットフォームが市場を覆う現代、そして今後は、この理論は機能しないどころか、これを前提として構築された20世紀型の完成形とも言える組織構造を持つ企業はその構築が精緻になされていればいるほど、決定的な問題点(弱点)を抱える恐れがある。
現段階で、プラットフォーマーの荒波を被っていない市場にいる企業も(特に日本の場合は)少なくないから、当面はこの戦略が機能するはずと考える向きも少なくない。だが、この業界構造が変化せずに続くことを前提とするのは、今後どんどん難しくなる(そもそも現状に甘んじていること自体がリスクになる)。GAFAの成功法則をトレースして、昨今短期的に急成長している企業が「創造的破壊企業」呼ばれるようになって来ているが、この典型例であるタクシー配車のUberや民泊のAirbnbのように、既存の業界の外側から突如現れて、従来とはまったく異なったビジネスモデルで業界構造をひっくり返してしまう。昨今話題になる大手銀行の人員縮小計画も、フィンテックを担ぐ競合の参入の可能性が引金の一つになっている。
また、いち早くプラットフォームが浸透している業界に特に言えることだが、今や「顧客」「供給業者」を明確に分けることは難しく、それぞれが提携、共同開発、ライセンス契約等によって目まぐるしく関係を変化させ、顧客がライセンスを供与する供給者であるようなことも珍しくない。しかも、昨今では、顧客との価値共創、ネットワーク化といった「共に価値を創り上げる」ことが、最も大きな価値を生む、重要な戦略となりつつある。顧客の側も、単なる「消費者」として財やサービスを消費するばかりではなく、シェアや贈与等の交換の割合も大きくなり、この市場で生き残るには、こうした消費行動の変化を理解し先取りする能力も不可欠になりつつある。いずれも20世紀型の競争戦略とは異質というしかない。
昨今、自動運転、EV化、コネクテッド等、自動車関連技術が軒並みIT関連技術の圧倒的な攻勢を受けつつあり、近い将来既存の自動車会社はIT関連企業の下風に追いやられるのではないかという危惧が現実味を帯びてきているが、それは単に技術だけの問題ではなく、既存の自動車会社とGAFAとの間の、企業としての戦略やそのために作られた組織や風土の違いの方がむしろ影響が大きいとも言え、それゆえに、今のままでは既存の自動車会社が覇権を握り続けることは難しいと考えざるをえない。
◾️アキレス腱と逆転のチャンス
このように述べてくると、GAFAやそれに追随する創造的破壊企業は、他の企業の追随を許さない、圧倒的な存在のように見えてくる。だが、必ずしもそうとは言えない。プラットフォーム戦略の中核にあるエコシステムの維持拡大は、それが大きくなればなるほど非常に難しいことが昨今顕になりつつある。ごく最近も、フェイスブックが、英国のデータマイニングと選挙コンサルティング会社、ケンブリッジ・アナリティカに情報の流出と目的外使用(政治利用)を許したことが大きな問題になっており、その余波を受けて相対的にプライバシー保護が弱いとみなされたTwitterの株価が大幅に下落するというようなことも起きている。昨年はYouTubeに反ユダヤ動画が流れて大騒動になったこともあった。
新興企業でも、DeNA参加で劣悪な情報を流したメディア「WELK」の事件なども記憶に新しい。コミュニティを活性化して検索されやすいようにという目的ばかりが先走っても、プライバシーの管理がおろそかだったり、フェイクニュースや誹謗中傷が溢れるようになると、コミュニティは維持できず、下手をするとシステム全体があっという間に衰退してしまいかねない。(現実に、WELQは閉鎖を余儀なくされた。)
そういう意味では、プラットフォーム戦略は今、大きな岐路にあるとも言えるが、逆に言えば、この危機を乗り切ることができた企業が2020年代以降の真の勝者となることは疑いない。この点、現在劣勢に立たされている日本企業の復活のきっかけにできるチャンスもあり得るように私には見える。早く古い戦略に見切りをつけて、一方、昨今の人工知能技術等の表面的な騒ぎに右往左往せず、生起しつつある市場構造の中長期的な展望の把握につとめ、新たな戦略を練り直して起死回生を図って欲しいものだ。
*1:
プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか
- 作者: アレックス・モザド,ニコラス・L・ジョンソン,藤原朝子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/02/07
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*4:GoogleとFacebookの2社による2017年の広告売上は、世界のオンライン広告市場の61%、世界の全広告市場の25%を占めている。
世界のオンライン広告市場における、2巨人(Google+Facebook)のシェアは、2012年の47%、2016年の58%、2017年の61%とはじき出している。今年(2017年)は、Googleが44%、Facebookが18%も占めている。
http://blogos.com/article/264161/
*5:例えば、著作権のように従来はシステマティックに管理することが難しかったものを管理可能とする技術としてブロックチェーンは注目されており、まさにアナログからデジタル/インターネットシステムによるプラットフォーム化を促進する技術として機能することが期待できる。