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創出され続ける『今』/TwitterとUstreamのインパクト


すごく楽しいセカンドライフ内のライブ


先週の日曜日、4月11日に、自分のTwitter のタイムラインを何気なく見ていたら、セカンドライフ内でジャズライブとそれに引き続きトークライブショーを行うという告知があった。23時から、ということだったので、急いでそれまでやっていたことを片付けて、そのTwitterに載っていたリンクをたどってみた。すると、行き着いた先は、Ustreamのサイトだった。セカンドライフ内のイベントをUstreamで中継しているわけだ。画面にはTwitterによるつぶやきも流れて来て、これだけ見ていると、最近とてもよく見かけるようになった、Ustreamのライブ中継である。


そのうち、Ustreamの小さな画面に飽き足らなくなってきたので、しばらく放置状態にあったセカンドライフを起動して、自分のアバターでその会場に行ってみることにした。するとちょうどトークショーが開かれていて、沢山の美しき着飾ったアバターたちが詰めかけていてそれを聞いている。画面にはチャットによるコメントが矢継ぎ早に流れ、それを登壇者(登壇アバター)が拾ってコメントする。そういう双方向性もある。そもそもセカンドライフ内の世界はとても美しく、Ustreamで外側から見ているのではわからない臨場感にも溢れている。久々に本当に楽しかった。トークショーを全部聞く時間はなかったので、セカンドライフからはいったん退場して、Ustreamに残るアーカイブで後で内容を確認した。SEOTECH - 検索エンジンから集客が欲しい人のために



セカンドライフのタイプのサービスの欠点


セカンドライフは、『急速に注目を浴びて成長したが、バブルがはじけて萎んでしまった失敗サービス』という評価が一般的になってしまった。(それどころかその種のサービスの代名詞になってしまった感さえある。)私にとってセカンドライフは当初から非常に興味を感じたサービスであり、将来的な可能性という意味では今でも変わらず期待し、応援してもいる。だが、世評と同様、ある時点からはセカンドライフが日本でmixiのようなスタンダードなサービスとして定着するレベルに到達するのは当面難しそうだと考えるようになった。


企業参入が非常に盛り上がっていた2007年の半ば頃までには、すでに盛んに問題点として指摘されていたこと、そして、セカンドライフがこれ以上それまでのペースで拡大することは難しいと私が考え始めた主要な理由は次の3つだった。


1.物理的な制約/参入のしにくさ

要求PCスペックが高く、アバターを作ったりする手間が面倒で、しかも操作が難しい等、大量参入を迎えるにはあまりにハードルが高いという印象があった。だからセカンドライフのことを認知している人が増えても、実際に参入している人はすごく少なかった。


2.目的が散漫で何をすればよいかわからない

自由度が高過ぎるセカンドライフは、目的意識が明確な人でなければ、何をすればよいかすぐにわからなくなる。普通のユーザーが苦労して(物理的な参入のしにくさを乗り越えて)参入しても、『それで?』となってしまうようでは拡大のモメンタム(勢い/はずみ)を欠いてしまう。


3.コミュニケーションプラットフォームとしての致命的な欠点

場所の制約を取り払って世界中の人が簡単に集えるという意味では、コミュニケーションインフラ/プラットフォームとしての期待も大きかったが、アバターがその場所にその時間に集まらないことにはコミュニケーションは始まらない。実際、ある特定の時間に参入する人の数はどうしても限られているから、街が増えれば増えるほど、どの場所に行っても誰もいないということになる。この手のサービスは、参入する人どうしのコミュニケーションの活性化が鍵となるが、その点では致命的な構造的欠陥があると言わざるをえなかった。


中でも、この3番目はセカンドライフだけではなく、Ustream Ustream - Wikipediaのような実況中継タイプのサービスにも該当するが故に、Ustreamに期待はしつつも大きくブレークすることは難しいとする人が多かったコミュニケーション活性化のしかけに優れたニコニコ動画の方に軍配を上げる人がどう見ても大勢だった。(同時に、テレビの衰退の徴候を同様の理由で述べる人も少なくなかった。かつての『茶の間の王者』も家族が茶の間に一同に集まる機会が減って、しかも、職場の同僚と番組をネタに盛り上がるというようなこともめっきり減って来ている。)私自身も、特にこの3番目の理由に納得していったん自分の頭を整理したつもりでいた。



状況が変わって来ている?: テレビの復活


だが、2010年4月現在、どうもすでにこの状況を変えるようなことが起きている。少なくとも2009年半ばくらいの認識ではもはや説明できない新しい事態が起こって来ているようなのだ。


それを端的に、しかも非常に納得の行く説明で教えてくれたのは、佐々木俊尚氏の有料メールマガジンの一節だ。

テレビは歴史的に、受動的なメディア(パッシブメディア)だと言われていた。リビ ングのソファに座って画面を眺めているだけで、自動的に情報が視聴者の頭に流れ込んでくるからだ。しかしこの受動的コンテンツと、膨大な視聴者のソーシャルメディア上でのコメントが結びつくことによって、テレビは集合知と接続され、ハイブリッドな新たなコンテンツへと変容しつつある。
佐々木俊尚のネット未来地図レポート 2010.3.29 Vol.084 より一部引用


これはどういうことかと言えば、テレビ画像を大容量のHDDレコーダー等に一週間単位ですべて録画し、一方で番組のシーンそれぞれにテキストによるデータ(メタデータ)が放送時間、放送局名と共に記録されていて、誰かがどの番組のどの場面が面白いとつぶやけば、すぐにそのシーンを取り出す事ができる。また自分で番組を見ていて、面白いと感じたら、すぐにTwitter等でコメントをネットに送ることができる。そのコメントが蓄積されれば、コメントの面白さにひかれてテレビを観たり、場面ごとの感動を他の人と分かち合うこともできるわけだ。この点のインフラでは米国の方が進んでいるが、日本でも最低限の環境は整いつつある。(佐々木氏はこの一例として、8チャンネルの番組を丸ごと一週間分保存できてしかもメタ情報が利用できるHDDレコーダーである、SPIDERの例をあげている。)



Ustreamの躍進


ここ数年、インターネットに押されて一日当たりの視聴時間が減少しているテレビに、どういう形であれ生残る可能性が開かれて来ているということになる。21世紀の動画コンテンツの発展の向かうべき方向が明らかになりつつあるとさえ言えるかもしれない。だが、昨今の日本ではこれと同様の構図で活性化して、時代の最先端に躍り出ているサービスがある。それがまさにUstreamだ。


おそらくUstream単独では、個人でも簡単に利用できる便利な録画ツールとして、そこそこの人気にはなっただろうが、今日のブレークに至ることはなかっただろう。ところが、Ustreamで面白そうなライブ番組があればTwitterで告知され、見逃してもアーカイブされていることが多いから、後で観ることもできる。ライブの間中Twitterによる番組についてのコメントがニコニコ動画さながらに流れ続ける。時には、そのTwitterの発言内容にUstreamで中継されている当事者が反応することも少なくない。もちろん、内容が面白ければアーカイブされた録画内容についても多数のコメントが寄せられる。まさにUstreamにはなかった機能がTwitterで補填されて、非常に面白い動画配信プラットフォームに格上げされている。更に言えば、これらの機能はすべてiPhone上で実行できる。この手軽さがまた普及を促進している。



生成される高密度な『今』


Twitterを使っていると自分がフォローした人のタイムラインに沢山のつぶやきが流れて行くわけだが、そこに今面白そうなUstreamニコニコ動画のライブ番組がある、という情報があって、それに惹かれて見に行く。それがとても面白くて、しかも時間があれば観続ける。なければ、アーカイブされた動画を時間がある時に観る。その時には、他の人の感想や批評が沢山出ていて、面白そうだと思っても、酷評されていれば観るのをやめて他のものを探す。Twitterで誰かに聞いてみてもいい。運が良ければすぐに回答が来る。いつのまにか、これが一連の流れとなって自分の日常の隙間時間を支配していることに気づく。好奇心の強い、私のようなタイプの者にとっては、このような時間の使い方による『情報収集バリュー』がものすごく高度になり、今この瞬間も猛烈な勢いで進化し続けていることを実感する。それは暇つぶしや楽しみを求める人にとっても同様だろう。『今』『リアルタイム』が非常に高密度になっている。Ustreamによって多数の『今』が切り出されてストックされ、それがTwitterによってインデックス化されて個人に提供される。そして多数のTwitter参入者によって多数の多義的なコンテキストと物語を与えられていく。これが連鎖的、かつ循環的に繰り返されて、ますます高密度で面白い『今』が提供される。



Twitter × Ustream


Ustreamを活性化したTwitterは、今度はワンセットになって、別のものを活性化する。これがまさに、一番初めに述べた、セカンドライフの活性化に繋がっているようだ。私は不覚にもあまり知らなかったが、このコンセプトは既に実験的なサービスとして実現されている。デジタルハリウッドの三淵氏らによる、Virtual World Broadcast だ。VWBC WEB SITE 要注目だと思う。


また、TBSラジオが、『ニュース探求ラジオ』Dig | TBS RADIO 954kHzと銘打ってこの4月から開始した番組があるが、そもそもこれはインターネットによる視聴が出来るという意味で、大変革新的ではあるのだが、火曜日のパーソナリティーであるジャーナリストの神保哲生氏の4月6日の番組など、同時にUstreamニコニコ動画でも中継されていて、Podcastingアーカイブもされている。まさに『出入り口全開』だが、これも非常に高密度な『今』『リアル』が創出されていたと思う。


まだ始まったばかりだが、遠からず、ごく普通の人の『今』の過ごし方を根本的に変えてしまうインパクトがあるのではないか、その流れの中で、劣勢が伝えられたセカンドライフのようなサービスが再度活性化して、本来のメリットが再発見されるようなことが起こるのではないか、そんな期待感をすごく身近に感じることができるようになった。2010年は本当に熱い年になりそうだ。