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第3回FTMラウンドテーブル/社会が変われば消費も変わる

1月26日(木)に、国際大学GLOCOM主催のFTM フォーラム(Future Technology Management フォーラム。 議長:村上憲郎GLOCOM教授・主幹研究員、多様な人々を幸せにする「スマート社会」の構想と、その実現に必要な技術を取り巻く制度・カルチャー・企業経営を議論)の一貫で開催されているGreen Table (今後5年以内に社会の中心を担う世代の研究者、経営者、技術者、社会活動家をコアメンバーとしたラウンドテーブル)の第三回目が開催されたので参加した。

第3回FTMラウンドテーブル(Green-Table)「消費はこの先どう変わるのか? 」 | 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター


『感想/まとめ』を書くのに手間取っていたら、何と追い打ちをかけるように、インフルエンザにかかってしまってブログを書くどころではなくなってしまった。やっと回復したとは言え気力が続かないので、ごく簡単なメモになってしまいそうだが、それでも何か書いておこうと思う。



開催概要(敬称略)


・日時:2012年1月26日(木)18:00〜20:00

・場所:国際大学GLOCOM ホール

・話題提供

「消費はこの先どう変わるのか?」
山田メユミ(株式会社アイスタイル取締役 兼 @cosme主宰)

WEBサービスやデバイスの発展により消費や流通は今後どう変化するのか?弊社運営の化粧品サイト『アットコスメ』の利用動向や、ネットを起点に商品開発・EC・データ分析・リアル店舗運営など様々なソリューションサービスをしている事業の紹介、これらを通じて感じていること等をお話し、スマート社会へ向けた今後のあるべき進化の形について、皆様とディスカッションしたいと考えています。』


・参考資料
フィリップ・コトラーほか著、『コトラーマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』、朝日新聞出版、2010年。
アットコスメ


・プログラム
18:00 〜 これまでの議論の整理
     庄司昌彦国際大学GLOCOM主任研究員)

18:10 〜 話題提供「消費はこの先どう変わるのか?」
     山田メユミ(株式会社アイスタイル取締役 兼 @cosme主宰)

18:40 〜 ディスカッション(予定)
     川崎裕一 (株式会社kamado代表取締役社長)
     閑歳孝子 (株式会社ユーザーローカル 製品企画・開発担当)
     楠 正憲 (日本マイクロソフト株式会社 技術標準部 部長)
     庄司昌彦 (国際大学GLOCOM 講師・主任研究員)
     西田亮介 (東洋大学経済学部非常勤講師)
     藤代裕之 (NTTレゾナント株式会社 新規ビジネス開発担当)
     藤本真樹 (グリー株式会社 取締役 執行役員CTO 開発本部長)
     山田メユミ (株式会社アイスタイル 取締役 兼 @cosme主宰)

19:30 〜 オピニオンメンバー・会場も含めた全体ディスカッション
20:00   終了



驚くべき先進性


山田メユミ氏による、『アットコスメ』のお話は事前の予想以上に非常に面白かったし、あらためてこのサービスが非常に良くできていることに感服した。しかも、よく考えてみると、この日本最大級の化粧品の口コミサイトがサービスを開始したのは、1999年12月だ。やっとその前年にGoogleが創業されたばかり。今やすっかり見る影もなくなってしまった米Yahoo!がその最盛期を迎えようとしていたころだ。ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)どころか、日本にはまだブログさえない。このような時期に、よくぞこれほど先進的なビジネスを立ち上げることが出来たものだ。ネットビジネスの激しい栄枯盛衰の歴史を多少なりとも知るものなら、感嘆の念を抱かずにはいられないはずだ。


インターネットの覇権は、当時、MicrosoftYahoo!が握っていたが、Googleを経て今では、SNSの巨人、Facebookに移りつつある。ここに来てやっと、ごく普通の会社でも、口コミを利用することが現実的になってきた。創業から10年以上経って、やっと時代が『アットコスメ』に追いついてきた、ということになる。



消費の変化のガイドラインマーケティング3.0』


その山田氏が、今後の消費の変化のガイドラインとして上げたのが、マーケッティング界の超大物フィリップ・コトラー氏が提唱する、『マーケティング3.0』である。もう少し丁寧な言い方をすれば、『マーケッティング3.0』を語らざるを得なくなったコトラー氏の見る、消費および消費者の変化をガイドラインとして提示した、ということだ。


コトラー氏が『マーケティング3.0』について解説する著作、『コトラーマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則 』*1が発売された時、私も一早く購入して、当ブログに書評も書いた。http://d.hatena.ne.jp/ta26/20101113 コトラー氏は、マーケティング1.0が『製品』、2.0が『消費者』、そして3.0に至ると、『価値創造』が主導し、消費者は『恊働』『文化』『精神性』をマーケティング手法に求めるようになると述べる。


ご参考に、本書から、主張の核心(と私が感じた)部分を再度引用しておく。

それは消費者がより恊働的、文化的、精神的なマーケティング手法を求める、より洗練された形の消費者中心の段階である。ニューウェーブのテクノロジーは情報やアイデアや意見の広範な普及を容易にし、そのおかげで消費者は価値創造のために恊働することができる。テクノロジーは政治的・法的状況や経済や社会文化的状況のグローバル化を推進し、それが社会の中に文化的パラドックスを生み出す。テクノロジーは、世界をより精神的な視点からとらえる創造的な市場の台頭も推進する。 同掲書P44

根本的な変化


この変化の根本原因は、本のタイトルにもあるとおり、ソーシャル・メディアが社会に行き渡った結果、企業と消費者の関係に根本的な変化が起きたことにある。従来は消費者に比べて量質とも圧倒的に上回る情報を持ち、時に『イメージ操作』をしたり、製品の欠点を隠したり見え難くしてきた企業側も、ソーシャル・メディアを経由して消費者の口コミ等による情報が急増して、情報のバランスは逆転し、今では企業の嘘や誤摩化しは難なく見破られてしまうようになった。消費者にとって真に価値ある製品やサービスを提供する企業だけが生残って行くようになり、消費者の側も、選択眼が研かれ、消費行動はより洗練されて行く。また、双方向の情報交換が容易になって、消費者同士、あるいは消費者と企業はより恊働的になって行くことも、マクロの方向性という点では大方誰もが賛同できるところだろう。



それでも感じる違和感?


ただ、非常に興味深いことに、この『マーケティング3.0』に言及した山田さん自身は、このコンセプトはまだ必ずしもピンと来ないところもあると言い、パネラーや会場の参加からも、それに賛同する声は少なくなかった。実のところ、私自身、日本の消費は3.0に行き着く前に、2.5くらいの段階が比較的長く続くのではないかと考えている者の一人だったりする。


それは、一つには、フィリップ・コトラー氏が主にベースとする米国と私達のいる日本の『価値』や『洗練の意味』あるいは、『恊働』の現れ方の違い等が大きいと考えられることもあるが、それ以上に、消費という行為が、いまだに、価格や利便性のような単純な合理性を超えた巨大な不合理や無意識に支配されている、ある意味シンボリックな行為であり続けているからだ。洗練された美意識が背後にあることもあれば、不安にかられた自我承認欲求が消費の形をとっていることもけして少なくない。だから、相応に、企業側も善性一辺倒というわけにも行くまい。表の光が強ければ、闇もまた濃くなるということもあるだろう。当分清濁相半ばするというのが現実に近いと思う。



社会行動全般の変化


ソーシャル・メディアの洗礼を受けて、消費行動に限らず、社会行動全般に広範かつ劇的な変化が及ぶであろうことについては、繰り返すが、私もまったく異論はない。異論はないどころか、これこそが、2010年代前半の最も重要な論点だと考える。


その重要な論点を提供してくれる一人がフィリップ・コトラー氏であるわけだが、昨今様々な論者が、様々な切り口でこの問題を語るようになってきており、私自身もう少し立入ってお話したいところなのだが、病からの復帰直後の今の私にはこのあたりが限界か。次回以降、あらためて取組んでみたいと思う。

*1:

コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則