読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

AMNブロガー・イベント/ぐるなびの新サービスSquare Clip


概要


6月21日(火)に、久々にアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)主催のブロガー・イベントに参加してきた。今回の題材は最近リリースされた、グルメサイト運営で有名な(株)ぐるなびの新サービス『 SquareClip』。企画者から直接説明を受け、集まったブロガーと共に活発な議論が交わされた。


イベントの概要は下記の通り。


■タイトル:みんなでツクル!新感覚、位置情報サービス「SquareClip(スクエアクリップ)」ブロガーイベント
■日時:6月21日(火)19:00開場 19:30スタート(21:30終了予定)
■会場:ぐるなび大学(株式会社ぐるなび内)
■住所:東京都千代田区有楽町1-2-2 東宝日比谷ビル6F
■地図URL: http://www.gnavi.co.jp/company/profile/office/headquarters.html
■募集定員:20名
■協賛:株式会社ぐるなび
■運営:アジャイルメディア・ネットワーク株式会社

http://fansfans.jp/campaigns/detail/425



新サービスSquareClip(スクエアクリップ)の概要は下記の通り。

Description
SquareClip[スクエアクリップ]は複数のスポット情報をテーマに合わせてひとつにまとめた“パック”を誰でも簡単に作成、共有できるサービスです。
自分で作成したパックやお気に入りのパックを自由にカスタマイズ。あなたも自分だけのタウンガイドを持って街に出かけてみませんか!?
■自分で作成したパック(作成はPCサイトから)を他のユーザーと共有できます。
■気になるパックを見つけたら「イイネ!」ボタンで評価したり、自分の「お気に入り」に追加したり、コメントを残したり。
■たくさん「イイネ!」されたパックは人気順で上位表示されます。
■パックへのコメント投稿や、スポットへの写真投稿機能があります。TwitterFacebookと連携すれば、オススメのパック情報を外部メディアに流すことができます。
■位置情報を活用することで、距離の近いパックやスポットを探すことができます。   AppStoreの SquareClip購入ページより引用


SquareClip Appstore ダウンロードサイト
Connecting to the iTunes Store.

SquareClip Webサイト
SquareClip - グルメ情報検索サイト -



岐路にたつグルメサイト


今回のイベントは、(株)ぐるなびの中の人(企画者)に直接お話が聞けるチャンスがあるため、非常に期待し、楽しみにしていた。というのも、昨年(2010年)は、グルメサイトとしての『ぐるなび』とその最大のライバルである『食べログ』にとって非常にエポックメイキングな年で、共にそのビジネスモデルが岐路に立っていることを世に知らしめるちょっとした『事件』が起きた年でもあった。

ぐるなび - レストラン予約と宴会・グルメ情報 検索サイト
食べログ - ランキングと口コミで探せるグルメサイト



ぐるなびの立場から見ると、昨年はサイトのページビューが食べログにとうとう追い着かれ(抜かれ)たという点で象徴的な年になった。(株)ぐるなびは1,000人を超える従業員を抱え、飲食店に直接出向いて営業し、広告等で料金を得るモデルのため、ユーザーのページビューが直接事業収益に影響するわけではなく、当の追い着かれた食べログを収益では大きく引き離していることもあって、緊迫感は希薄なのかもしれない。だが、ベースが飲食店の広告モデルである限り、消費者から見たネット媒体としての価値が、自らとは全くタイプの異なる(食べログ=消費者/コミュニティーからの投稿情報によって成り立つモデル。但し、食べログも飲食店からの収入も得ており、ぐるなびモデルとまったく違うという訳ではなくなっている)サービスにシフトしているように見えることは必ずしも穏やかではいられないはずだ。しかも、飲食以外の他の分野でも、消費者/ユーザーは企業の広告宣伝を信用せず、コミュニティー内の口コミ情報に雪崩をうってシフトし、より重視するようになってきている。ビジネスモデルとしての『ぐるなび』はやはり岐路を迎えていると言わざるをえない



「ぐるなび」と「食べログ」のビジネスについてのメモ | isologue



打開策?


ただ、だからといって、モデルとしての完成度が高い分、ぐるなびにとってユーザー投稿タイプのモデルにシフトすることはかなりハードルが高そうだ。ユーザー/コミュニティーサイトに自由に発言を許しておけば、よい評価だけではなく、辛辣な、場合によってはネガティブなコメントで溢れることも覚悟せざるをえない。だが、それでは現状のぐるなびモデルは成立しない。今回も中の人のコメントで非常に印象的だったのだが、飲食店をユーザーに評価させたり、飲食店をこわしてしまうようなクーポン(いわゆるグルーポンのようなフラッシュマーケティング?)には慎重に対処する等、飲食店に非常に気を使っていることがうかがえる。まさに、モデルの完成度が高い故に環境変化に対応できなくなってしまう、イノベーションのジレンマ』の典型例にならないとも限らないのだ。

イノベーションのジレンマ - Wikipedia


このジレンマへの打開策があるとすれば、それはいったい何だろう。飲食店との関係を壊さずに、ユーザー/コミュニティーの発信情報やコメント等を有効に活用して、ぐるなびモデルを強化するような窮余の一策はあるのか。そのように考えを巡らせてこのイベントに参加したため、私の疑問に対する答えが今回の新しいサービス( SquareClip)にあるのか、まだサービスとして未完成だとしても、コンセプトレベルで何らかの打開策を見つけることができているのかについては強い関心があった。



チェックインが答え?


この疑問に対する一つの答えがあるとすると、『チェックイン』という概念を持ち込んで華々しく登場した、FourSquareタイプのサービスということになる。ゲーム的なモチベーションでユーザーの興味を持続させつつ、対象の飲食店に繰り返しチェックインするユーザーに何らかのクーポン、特別メニュー等を提供する等で報い、関係を強化することができれば、モデルの破綻にもつながらない理想的な策になりうる。 ぐるなびタイプのモデルには最も親和性が高いと言える。

東京 食べ物、ナイトライフ、エンターテイメント



興味深いことに、 SquareClip企画開発チームも当初は、FourSquareライクなサービスをつくってリリース直前まで行ったようだ。しかしながら、百式の田口氏の『もうチェックイン・サービスでもないだろう』という一言に目が覚めたように方向転換したのだという。確かに、一時期話題が沸騰した『チェックイン』サービスも、特に日本ではゲーム的な興味、他者と情報を共有しあう面白さ等のモチベーションが初期熱狂を過ぎて維持が難しくなっているように見える。このままでは『キャズム越え』は難しいのではないかとささやかれつつあるのが現実だ。本家のFourSquare自体、日の出の勢いのFacebookがチェックイン機能を装備して来たこともあってか危機感がありありで、タウンガイド的な方向への展開の模索も見られるようになって来ている。


位置情報×キュレーション


方向転換を決意したSquareClip企画開発チームが次に向かったのは、情報をテーマごとにまとめることができるサービス(TogetterNaverまとめ等が近いコンセプト)である。特にSquareClipの場合は『位置情報』をユーザーが各自の興味や必要に応じて選び出して(キュレーションして)まとめる(パックする)ことができて、しかもそれがソーシャル的なタウンガイドとして機能することを狙っている。そして、ユーザーが情報をまとめる動機/モチベーションとしては、『情報を収集すること』、『それを開示すること』だけに(少なくとも当面は)絞ったようだ。だから、ゲーム性を排除し、共有機能もなく、クーポンの配布を最初から餌にするようなことも考えなかったという。

ツイッターをまとめよう - Togetterまとめ
NaverまとめNAVER まとめ[情報をデザインする。キュレーションプラットフォーム]



実際に使ってみると、機能的にはまだあまりに不足していると言わざるをえず、企画意図さえ実現できているとは言いがたい未完成アプリではあるが、ここまで説明を聞いて、意図と意欲についてはある程度理解はできた。どうやら現状のぐるなびの弱点を補填することを過度に求められているわけではなく、ある程度企画者に自由度を与えて、やるだけやらせてみた、というのが実情に近そうだ。



コンセプトが曖昧


ただ、お話を聞いていて多少心配になったのは、当面強制はされないにせよ、最終的にはぐるなびモデルとの整合を求められ、また本人達もそれを模索しているのは明らかなのに、その一方で、飲食以外の位置情報収集にも自由に道を開く等、コンセプトの絞り込みと維持が甘いように見えることだ。しかも何を持って『成功』とするかゴールが明確でないことも早晩問題になるのではないか。収益モデルにすることは難しそうだし、ぐるなびモデルの補填というには、焦点が曖昧になっている。まったく新しい価値を提供して、トラフィックを稼ごうにも、そういう点での絞り込みも甘いようだ。企画者の印南氏はユーザーの声を聞いてスペックを充実させていくと語るが、コンセプトが曖昧なまま雑多なユーザーの声を聞いてスペックを追加していくと、メリハリのない、使いづらいアプリになりかねない。



モデルに内在するジレンマ


ここまで来たのであれば、ぐるなびモデルから一旦離れて、徹底的に『位置情報収集×キュレーション』にこだわってみるという手はあるし、それが一番得策だと思うが、位置情報をユーザーに投稿させるタイプのサービスでは、ユーザーに情報を提供してもらい続けてしかもサイトとしての魅力を維持するのが意外と難しいNaverまとめのようにジャンルを超えて情報を広くカバーできるサービスと違って、 いくら投稿が増えても、個々のユーザーにとっては自分と関係のない場所の情報にまったく興味が持てないということが起きがちだ。(東京のユーザーにとって四国のある一地方の情報が充実しても興味を感じない等)これでは投稿の増加とサイトの魅力がシンクロしない。『遠く離れた位置情報にも興味を感じられる仕掛け』についてもっと探求してみる必要はあるだろう。



期待している


結果的にかなり厳しい評価になったが、これは期待の裏返しと受取っていただければ幸いだ。実際、使い勝手がもう少し向上すれば、少なくとも私は活用してみたいと考えている。そういう意味では大いに期待している。それに、ここまで私が述べたようなことはぐるなびの企画/開発の方々の間では繰り返し議論されたに違いないので、いつかまたどこかでもっと突っ込んだ議論に参加させていただく機会を与えていただければいいなと思う。この領域には私自身大変興味を感じているテーマや課題が多く、聞いてみたいことや議論してみたいことまだ沢山あるからだ。それをお願いしつつ、今後のSquareClipの進化を見守りたいと思う。