「Web Business Shuffle 2.0」第38回でのお話を聞いて

IT情報トークイベント『Web Business Shuffle 2.0』に初めて参加した。(今回は38回目の開催)
T情報トークイベント 「Web Business Shuffle 2.0」第38回をApple Store 銀座で開催:Speed Feed:オルタナティブ・ブログ



開催概要は下記の通り。


開催日時 :2009年1月22日(木)
開演時間 :18時00分 受付開始時間: 17:30
終了時間 :20時00分
場所 :アップルストア銀座
東京都 中央区 3-5-12 サヱグサビル本館3F


今回もすでに非常に詳細なレポートが上がってきているので、内容の説明はそちらに譲って、自分の感想(というより雑感)を書いておきたい。Web Business Shuffle Vol.38 feat. 岩佐琢磨 : チミンモラスイ? 



モディファイ 小川浩CEO


主催者の小川浩さんは、著書も読ませていただいていて*1、非常に面白かった印象もあり、活動についても注目していたので、どのようなお話しをされる人なのか楽しみだった。


この日は、iPhone向けに公開している『MODIPHI SMART』*2の企業内活用についてのプレゼンがあり、質疑共々大変面白かった。企業内SNSは、IBMのように成功例として取り上げられる事例がある一方で、まったく浸透せずに放置されているケースも多いのが実情だろう。だが、社内コミュニケーションの活性化は、どの日本企業でも大きな課題であることに変わりはない。特に、バブル崩壊後の日本は、終身雇用の事実上の終焉と同時に、戦後長く続いた、家父長的な会社共同体が解体されてきており、最強ツールだったはずの『ノミュニケーション』*3も機能しなくなってきている。ただ、mixiが日本で成功したからといって、ほとんど同じような設計で会社にそのまま導入しても、機能するとは限らない。(私自身、価値観がまったく違う頭の固い経営者など、マイミクにはしたくはない!) 


小川さんの推奨する、『SMART』は、Twitter*4タイプのライトなコミュニケーションツールのようなので、これが企業にどの程度浸透するのか、非常に興味深い。日本の伝統的な大企業を何社か経験した私の直感では、若年層の規律の崩壊を嘆くシニアからの反発を乗り越えるのが大変そうに思えるがどうだろうか。まず、できるだけ早く成功事例をつくって、アピールすることが不可欠だと思う。成功事例を語ることができれば、大きな価値変動期である今はチャンスが広がる(企業の導入が増える)可能性もあるだろう。


小川さんのお話には、チューザレ・ボルジア*5や、テスラモータース*6等の例がスラスラと出てくるなど、普通のIT系人材とは違う香りがあると思ったら、マレーシアに6年駐在した経験があるという。しかも、97年のアジア通貨危機の時期をはさんでいるというから、さぞご苦労されたのだろう。当時、石油会社の仕事をしていた私も、タイのプロジェクトが壊滅的になり、以降建て直しに這いずり回ったものだ。なんだか親近感を感じてしまう。



セレボ 岩佐琢磨社長


この日のメインゲストは、岩佐社長で「家電と Webの現状とこれから」というタイトルのプレゼンテーションと質疑のセッションがあった。自身、ネット家電を手がけるベンチャー『セレボ』*7を立上げ、総額1億2000万円の第三者割当増資を受けて、製品の販売開始が近いというから、まさに岩佐社長の実体験から来る迫真力があった。


製造はすべて外注する、いわゆる『ファブレス*8と聞いて、最初は、大型テレビ(液晶・PDP)をファブレスで安価で提供するバイ・デザイン*9のことを連想した。バイ・デザインは、大型テレビが高価だったときはそれなりに存在価値があったが、大手各社の製品が揃って安価になってみると、品質への信頼感や、長期サポートへの不安感等が顕在化して、人気はいまひとつとなっている印象がある。だが、岩佐社長のお話を聞くと、セレボの場合は、競合ポイントが価格ではなく、大手家電メーカーが、ネット家電を構造上手がけられない(手がけにくい)領域を狙って、ネット家電としての高い(楽しい)付加価値を訴求していくというコンセプトなので、まったく違った狙いのようだ。


私自身、岩佐社長の言う、大手家電メーカーがネット家電にコミットできない、構造上のジレンマ(量販店売りきりモデルの家電はソフトの修正が大変、端末サイクルが長い、保証など販売後の責任が重い、ユーザー層が幅広い、既存CP(放送局やハリウッドや既存ユーザの反発等)は、比較的近いところで見る事ができる立場にあるので、実感を持って理解できる。そういう意味では、確かに、セレボのようなベンチャー企業に十分チャンスはあると思う。


それにしても、日本の大手家電メーカーは、一方で得意の垂直統合モデルは水平分業モデルに脅かされ、輸出は円高に阻まれ、構造上ネットとの融合が困難ということになるから本当に大変だ。セレボに脅かされるまでもなく、すでにアップルの事例が強烈なアンチテーゼとなっている。岩佐社長のような人が沢山出て来て、日本の家電メーカーの構造が革新されていくことを望みたいものだ。岩佐社長のブログキャズムを超えろ!は普段から楽しく読ませて頂いており、若いが業界の知識はひとかたならぬものがある事はわかっていたが、こうして演壇からのお話を聞いていると時代に後押しされた強いオーラを感じる。是非頑張って欲しいと思う。


オープニングプレゼンをされた、末田社長は事前に存じ上げなかったが、モバイルに係わる興味深いお話でもあり、以降活動を注目させていただきたいと思った。