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第8回ジオメディアサミット/さらなる無限の可能性へ


去る2012年1月23日、第8回ジオメディアサミットが開催されたので、参加してきた。遅ればせながら、感想をまとめてみた。



開催概要


・開催日時:1/23(月)15:30-19:30(15:00 開場) : 懇親会:19:30〜22:00
・開催場所:東京大学 駒場リサーチキャンパス コンベンション・ホール
http://wwwsoc.nii.ac.jp/scdj/access.html
・参加費:無料(懇親会は3000円)
・公式ハッシュタグ:#gms2012
第8回ジオメディアサミット | Peatix



○第一部:メイン講演:各30分(敬称略)

講演1:40,000店舗、3,850万会員基盤によるDBマーケティング
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 藤澤幸生

講演2:ニコトコを中心とした二子玉川でのジオサービス(仮題)
東京急行電鉄株式会社 福島 啓吾
都市生活創造本部事業統括部 企画開発部 企画担当

講演3「NFC利用によるビジネス拡大の可能性」
株式会社リクルート 鵜飼伸光



○第二部:パネルディスカッション:45分(敬称略)

店舗運営者からみたジオメディア
モデレーター
 株式会社ゴーガ 小山文彦
パネラー(順不同)
 株式会社マイネット・ジャパン 代表取締役社長 上原仁
 株式会社サンゼロミニッツ 代表取締役社長 谷郷 元昭
 株式会社FrogApps 代表取締役社長 中村仁
 株式会社nomad 代表取締役社長 小笠原 治
 有限会社らしく 代表取締役社長 佐藤 純也
 株式会社ゆめみ ソーシャルアプリ事業部 副事業部長 君塚 賢一

○ショートプレゼン:15分
GPSによるシームレス測位技術”IMES"について
測位衛星技術株式会社 取締役営業部長 石井 真



○第三部:ライトニングトーク:5分x12本



多様化する参加者


ジオメディア・サミットは今回がもう第8回目となる。運営は整然と行われ、閉会後には即座にUstream等により当日の模様がまとめられる*1、という具合にすっかり組織だって洗練されて来た。もう押しも押されもせぬ、ジオ系の権威ある情報発信と意見交換の場と言っていい。こうなると従来は近そうで遠かった流通や小売り、実店舗、あるいは不動産等やインフラ関連等のややオールド・エコノミーの側に属する職種の人たちの参加も一層増えて行くだろう。一方で、初期の頃のゴツゴツした手作り感の良さを知る人には「らしさ」を感じられない一抹の寂しさを感じた人もいたかもしれない。だが、黎明期にあるジオメディアサービスは今後急激に社会に浸透し、モノや人の流れを変え、人々の生活の質を上げ、ライフスタイルを変える中核的な役割を担って行くことは間違いない。ギーク*2やオタク系のマニアックな人から、普通のリアルのビジネスに従事する人まで一同に会して、従来の関係性を繋ぎ直して行くような、新しいタイプの『リワイヤリング(繋ぎ直し)』が尚一層必要になってくる。ジオメディアサミットは、今以上に多様性を受け入れ、トレンドセッターの役割を担い続けていくに違いないし、是非そうあってほしいものだと思う。



メインテーマはO2O


今回のメインテーマはO2Oということだが、O2Oとは、インターネットのソーシャルメディアや情報サイト等での人々の口コミ等の情報交換やゲーム、さらには電子マネー等のネット上の(オンライン)の活動や情報がリアルの購買行動に影響を及ぼしてリアルの店舗(オフライン)の売上げを押上げてきていること等を概観する概念だ。そして、今度はそのリアルな購買行動は大容量が蓄積可能になったクラウド(オンライン)に蓄積され、次のオフラインとの関係構築を準備することになる。蓄積されたいわゆるビッグデータ(数百テラバイトからペタバイト級以上のデータ量で、かつ非定型でリアルタイム性が高いデータ)がITの技術進化に後押しされ、比較的小規模の企業でも扱えるようになったことから、これ自体も非常に大きなビジネスのポテンシャルとして取り上げられるようになってきた。


ネット系のサービスは、今でこそソーシャル・ゲームのような巨額のマネタイズの実現を見ている領域があるとはいえ、全体で見ればまだマネタイズのハードルは高い。しかも、そこには、Google、アマゾン、アップルというような巨大プラット・フォーマーがいて、有望なビジネスは皆ブラックホールのように吸い取って行ってしまう。だが、マネタイズのパターン(ビジネスモデル)がしっかりと構築されているリアルと連携することができれば、オンラインとオフラインを統合して持続可能な新たなサービスが確立できる可能性がある。オフラインの側も、インターネットを活用した売上げ増には期待が大きい。



背景と展望


O2Oがこれほど注目されている背景には、スマートフォンの拡大』Facebook/Twitterを中心としたSNSの拡大』があることは言うまでもない。スマートフォンは何より先ずGPSをはじめとした位置情報の補足と利用の汎用化を進めた。同時に、SNS、中でもビジネスとして利用しやすい実名制のFacebookが日本でも思いのほか会員を増やした。しかも、SNSスマートフォンとの相性がことのほか良いため、これらが相乗効果を生み『オンライン』と『オフライン』は急激に接近し、リアルタイムに結びつけられるようになった。GPSだけではなく様々なセンシング技術の活用、写真や動画との連携等も容易にできるようになり、入手した情報の整理/分析/活用が現場でできるため、単純な物流改善やコスト低減だけではなく、バーチャルの場でしかできなかった『ソーシャル・ゲーム』の要素をよりリアルの場に持ち込むこともできるようになってきている。昨今、ゲーミフィケーション』(ゲームの力学=メカニズムをゲームではない分野に応用しようというコンセプト)ジオメディア系の関係者にもバズワードとして盛んに語られるようになって来ているのは、このような『インフラ』の充実があるからだろう。(foursquareのバッジや、食べログのレビュアーランキング等、位置情報と関連の深い著名サービスでも実装が進んで来ている。)



マスメディアではなくミドルメディア


ただ、現段階でジオメディア・サービスのメディアの部分の心臓部にあるのは、あくまでソーシャル・メディアであって、マスメディアではない。そこのところの特性を理解せずに単純に既存のマスメディアの代替物と考えてしまうようだと思いのほか効果を得ることができずに失望することになる。


今回は、最初にカルチュア・コンビニエンス・クラブ東急電鉄のプレゼンテーションがあった。両社ともジオメディアとの相性が非常に良さそうなのは間違いないところだが、今ひとつその活用法に新規性がなく、プレゼンターもオーディエンスも今ひとつ『熱』を感じることができなかったと言わざるをえない。一方で、パネルディスカッションに参加したメンバーの話は、具体性もあり、『熱』を十二分に感じることができた。特に小規模な実店舗や地域の活性化を目的としてSNSを活用している、株式会社FrogAppsの中村社長や、株式会社nomadの小笠原 治社長はすでに店の売上げの10〜20%をSNSの活用で押上げていると語り、成果に手応えを感じている様子だ。最近では、マネタイズとの関連に疑念の声さえ上がることも少なくない位置情報サービスの『チェックイン』機能についても、ビジネスにおける意義と可能性を感じていることが伝わってくる。どうして、そのような違いがあるのか。


ソーシャル・メディアに精通した人ならすでに十分ご存知の通り、ソーシャル・メディアはあくまで『ミドルメディア』であり、価値観を共用する少人数、共感を感じることが出来る範囲のコミュニティ、震災復興のような共通の課題を抱える地域等に対して、自分の価値観を伝え、相互のコミュニケーションを活性化し、ファンや理解者を増やす等の目的で利用する場合には、非常な効果を発揮しうる。一方で、大量の人に一気に認知させるTV宣伝のような効果は期待薄だ。



規模の大きなビジネスに発展させるための方向性


だが、この段階に留まっていては、サービスのスケールを拡大することができない。ジオメディアによって世界を変えるほどのインパクトを持つサービスを実現するためには、もう一工夫必要だろう。そして、その方向性に関わるヒントは今回ジオメディアサミットの随所に見つけることができた。少なくとも以下の3つは明確に指摘できるし、サミットの開催者の意図/含意を感じることもできる。



(1)ソーシャル・メディアによって生成される新しい『社会的関係』を研究して
  『お金を使う』動機を見つけ、リアルビジネスにつなげて行く



パネラーの一人、マイネット・ジャパンの上原社長は、ちょうどこのジオメディアサミットの当日、新サービスを立ち上げを発表した。(ライトニングトークでも担当の青木氏より説明があった。元気玉系・お誕生日パーティー開催支援サービス「O.E.Y」) Facebookで繋がっている人の誕生日情報を元にネット内で人を集めたりパーティーをアレンジしたりして、これを実店舗に誘導して実際にパーティーを開いたり、プレゼントを贈呈するような行動につなげるサービスだという。リアルの現場では、誰かの誕生日にパーティーを開いてあげようと思いついても、実際には面倒であったり、時間がなかったりして萎んでしまうことが多い。これをSNSを利用して、リアルの活動に繋げるまで熟成するのが『コアコンセプト』だろう。この類いのサービスは今続々と立ち上がりつつあり、最も旬なサービスの一つと言っていいかもしれない。『ちょっとした感謝』『ちょっとした(盆暮れやおはよう、おやすみ等の)挨拶』『ちょっとしたうけ狙い』『ちょっとした見栄』『ちょっとした虚栄心』・・・SNSが無い頃には陽炎のように消えてしまったがSNSがあれば熟成してマネタイズにつなげていくことができる『淡い気持ち』は誕生日のお祝い以外にも沢山あるだろう。個人的には、このSNS内で生まれる新しい社会的関係(変化)をリアルビジネスに昇華していくタイプのサービスには今最も注目している。



(2)有力個人の発信を集め、編集により個性ある『メディア化』をめざす


パネラーの一人、サンゼロミニッツの谷郷社長の主催するサービス『30min.』はブログ記事を収集して上手く活用することで、サービスの個性化、差別化を実現している。インターネットの進化は、個人のメディア化を強力にサポートしているが、年々各個人の情報発信力やクリエイティビティには拍車がかかり、クオリティーは非常に上がっている(このままではプロのクリエーターという職種はなくなってしまうという意見さえある)。このような情報を上手く収集/編集して活用することで、従来とは一味違ったメディアを作ることができる可能性も一層高まっている。これは、個人の力量に負うところも大きく、誰でも可能というわけではないが、『ビッグデータ』の時代の競争に生き残るヒントとなる可能性もあり、もっと注目していい領域だ。



(3)ゲーミフィケーションの高度活用をはかる


先に述べたように、スマートフォンタブレットPCの普及は、ジオメディアにゲームのメカニズムを持ち込んで参加者を増やし、活性化することができる余地を大きく広げた(今でも広げている)。旅行に出かけたり、ドライブに出かける等の活動が活発で、位置情報(地図)をアシストとして必要とするニーズが大きいわりには不便なサービスが多かった時代には、競合他社より利便性で勝る製品やサービスを出すことに集中すればよかった。だが、今ではその競争も一巡し、どのサービスも遜色無くなって来ている。今後は『動機そのものをどう引き出すか』『サービスへのエンゲージメントをどう高めていくか』が最大の課題となり、人間の感情や習性を研究して巧みに利用することに長けたゲームのメカニズムを理解し、利用することの意義が益々大きくなって行くだろう。もちろん、ゲーム要素なら何でもいいわけではなく、競争のポイントは『消費者心理の高度理解』とシナリオライティングやサービスのパッケージングの『センスの良さ』にある。そして、特にこれをソーシャルの要素、中でも(1)のようなSNSを利用することで生じる『新しい社会的関係』と絡めたサービスとして提供できれば、大きく花開く可能性は大きい。



『身体』から『ハートとマインド』へ


今回のサミットに出席して、こうやって全体を振り返って見ると、トレンドの変化をひしひしと感じる。従来の位置情報サービスは、リアル世界の問題解決、利便性の向上、物流効率の向上、地域分析等、『身体』に関わるものがほとんどだったと言える。だが、SNSの要素がネット世界を覆い尽くすようになった今、そしてこれからは、感情、欲望、理想、愛情等、人の『ハートとマインド』マッピングこそ重要になっていくだろう。今回、インフラ側の提案として出て来た、NFC*3*4やIMES*5等も、『身体』以上に『ハートとマインド』を意識したサービス利用を考えるほうがより大きく発展する可能性が高いと思う。(ライトニングトークで出て来たいくつかのサービスにもそのポテンシャルを十分感じることができた)。



停滞とは無縁のジオメディア


世界は、欧州の危機や中国経済の崩壊に怯え、日本では未来の見通しが全く閉ざされてしまったかのように語られることも多いが、ジオメディアサービスには、そのような停滞感など無縁な無限の可能性とチャレンジングな課題が沢山あることも再確認できた。運営の関係者の方々のご尽力にあらためて感謝の意を表したい。



<参考情報>

チミンモラスイ! : 「第8回ジオメディアサミット」終了!
ジオメディアサミット • 第8回ジオメディアサミット、無事終了いたしました。
セキュリティチェックが必要です
[私家版] 第8回ジオメディアサミット #GMS2012 - Togetterまとめ
2012/1/23 #gms2012 第8回ジオメディアサミット - Togetterまとめ
ジオガールズブログ: 第8回ジオメディアサミットにいってきました