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LinkedIn日本上陸ブロガーイベント/刮目してみるべき理由

概要


10月20日(木)に、ビジネスに特化したプロフェッショナル向けSNS、『LinkedIn』を運営する米LinkedIn社主催のブロガー・イベントにAMNより招待いただいたので、参加してきた。(同日、日本語サイトが開設/公開され、渋谷にリンクトイン・ジャパン株式会社が設立された。)


イベントの概要は以下の通り。

・主催: LinkedIn社
・日時: 2011年10月20日(木)19:00〜21:30 
・登壇者:
  アーヴィンド・ラジャン(Arvind Rajan)
  アジア パシフィック&日本 担当バイス プレジデント
  兼マネージング ディレクター
  (LinkedIn、Managing Director and
   Vice President of Asia Pacific and Japan)

  キャサリン・ポーター(Catherine Porter)
  オペレーション管理部長
  (LinkedIn、Head of operations of Japan)

・会場: 六本木アカデミーヒルズ49「スカイスタジオ」



非常に大きな存在感


LinkedInと言えば、私自身は、登録はしていたが履歴もほとんど書かずに長く放置状態だった。ところが、前の会社にいた時に出来た海外の友人に名前を発見してもらったり、逆にこちらから発見したりということが続き、もっと驚いたことにはジョブ・オファーさえ来たこともあって、さすがにあわててLinkedInのことをちゃんと調べてみた。すると、日本にいて、海外とのコンタクトの少ない仕事をしていると気づきにくいが、米国ではFacebookに継ぐ非常に大きなプレゼンスを持っているソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)に成長していること、ビジネス関連では特に影響力があり、米国のように自らのキャリアを市場で積極的にアピールし、できるだけ高く評価してもらうことが常識になっている社会では、そのためのツールとして非常に有用であること等がすぐにわかった。


ビジネスに特化した実名制ということもあり、活動全般を扱うFacebookとの対比で見ても、ノイズが少なく、炎上やプライバシー問題が深刻になる心配もあまりない。ビジネスに特化されているから興味ある議論も見つけやすく、しかも深まりやすい。ビジネス以外の関係が複雑になりがちなFacebookのタイプのSNSとは一線を画し、必要な人材、コンタクトを取りたいタイプの人を発見し、たどり着きやすい。シンプルながらなかなか良く出来ている。



日本では使いづらいという先入観


それ以降はLinkedInの記事にはキャッチアップするようにしていたので、特に最近の拍車がかかった成長ぶりには注目していた。2011年早々に、米国の他のSNSに先駆けてIPO(株式新規公開)を果たし、会員も1億人の大台を超え(現在では1億2000万人いるという)、しかもその半数以上は米国外(200国に展開)というから順風満帆だ


だがそれを情報として知っていても、自分自身の履歴をきちんと書き直したり、関係を拡大したり、Groupに参加して議論を交わす等、LinkedInを活用するようになったのかと言われるとそうではなく、相変わらず放置状態のままにしていた。日本語対応していない煩わしさはあったが、私の場合過去の仕事の関係で多少は英語の読み書きもできるため、LinkedInでもう少しアクティブになることも決して出来ないわけではないのだが、それでもそのままにしていたのは、確かに自分の無精ということはあるにせよ、それ以上に、日本企業に勤務して、差し迫って転職願望があるわけでもないと、特にこのSNSにコミットするインセンティブを感じなかったからだ。


しかも、ここでアクティブに活動していることを会社の誰かに知られようものなら、陰口をたたかれたり、悪い噂を流されたり、痛くもない腹を探られかねない。かなり変わってきたとはいえ、大抵の日本企業はまだそんなものだろう。実際私の記憶に間違いがなければ、LinkedInの日本の登録者は先進国の中では最下位だったはずだ。加えて、最近では日本でも実名制のFacebookを使う人も増えてきていて、ビジネスの関係を広げるのにちょうどいいので、LinkedInより先ずFacebook、と考えていた。



どのように日本で仕掛けるのか興味津々


そんな私なので、いかにLinkedInの設計が良く出来ていても、日米の労働/雇用環境の違いはまだあまりに大きく、外資系勤務、企業の海外部門等の特殊な例外を除けば、日本でユーザーを増やす事はかなり難しいと感じていた。実際、2008年に日本版LinkedInを目指したYahoo!の『CU』も早々に(1年も経たずに)撤退したことも記憶に新しい。だから、今回の日本への本格参入のニュースを聞いたときに、おそらく私でなくても日本人なら口にするであろう、数々の疑問点に、LinedInの関係者がどのように応え、切り返して行くのか何よりまず非常に興味を感じた。そして、自分がもしLinkedInの日本での活性化を相談されたら、どのように答えるだろうと活発に思考をめぐらせることになった。

日本版LinkedInとなるか--ヤフーがビジネスSNS「CU」を開始 - CNET Japan
ヤフーのビジネス向けSNS「CU」 サービス終了へ - 閉鎖ニュース


実際の質疑の模様は、すでに当日の様子を詳細に写し取るようなレポートがあがって来ているからそちらを見ていただくのがいいと思うが、私自身、当日のセッションや懇親会での質疑を通じて、かなりLinkedIn社の考え方は把握することができた。そして、意外にも、少々別の観点からの問題意識も活性化させられることになった。その意味でも、今回のイベントに参加させていただいて、本当に良かったと思っている。

(検索結果無編集) #リンクトイン ブロガーミーティング - Togetterまとめ
「LinkedIn」日本語サイト開設、ビジネス特化で既存SNSと差別化図る -INTERNET Watch Watch
LinkedInが日本版開始--使い方とかFacebookとの違いまとめ #リンクトイン - NAVER まとめ



スタッフが語る日本でも流行る理由


日本企業ではLinkedInに登録すること自体、『転職するつもりなのか?』『愛社精神が無いやつ』等の印象をもたれてしまうのだが、何らかの対応策はあるのか、という主旨の質問が案の定一番始めに出た。これに対して、LinkedInのアーヴィンド・ラジャン氏は、LiknedInを利用することで会社からペナルティーが課される等の問題については、他国でも同様な反応があったが、LinkedInのことを詳しく知るに連れ、結果的に多くの企業が、従業員が参加することが会社にとっても価値があるということに気づくようになって状況が変わっていったのだという。


しかも、LinkedInは『転職SNS』という印象もあるが、実際にはプロフェッショナル同士がビジネスを真剣に語り合う場として活性化していることがポイントで、その結果、転職(リクルーティング)にも役立つがそれだけではなく、新たな顧客、ビジネスパートナー、共同経営者等を見つけることができるところにより大きな特徴と価値があることを強調する。


そのようなプロフェッショナルがいること自体会社の価値としてアピールすることができて、それが有効に機能する、というのは確かにありえる話だろう。特に、ITサービス系の新しい会社など、過去の実績や、企業規模や安定性、福利厚生等を訴求することが難しくても、事業のコアが魅力的で優秀なエンジニアやビジネスマンが参集しているのであれば、会社のプロフェッショナルが会社の枠を超えて他のプロフェッショナルと活発に仕事の関係を持ち、重要な問題についてフランクに、かつ熱く語り合っているのことを伺い知る事ができれば、特に優秀な人材にとっては魅力的で、入ってみたい会社に見えるはずだ。日本でもプロフェッショナルと呼べる優秀な人材は給与等の条件より優秀な人と働けることが何よりのインセンティブになる事は、最近、人事系のコンサルタントが盛んに口にするところでもある。LinkedInはビジネスマン全般を相手にするのではなく、世界に6億人いるといわれるプロフェッショナルに特化するというから、そうであれば尚のこと日本の優秀な人材、プロフェッショナルにもアピールする可能性はありうる。



英語がネックでは?


あらためてLinkedInに入って中を見てみると、『Group』等でかなり突っ込んだ、面白そうな議論が交わされていることがわかる。自分でも参加してみたくなるようなトピックもたくさんある。確かに、Facebookのように、何でも語れるSNSより、ビジネスに特化されていてノイズが少ない事のメリットをすごく感じる。ただ、少なくとも今のところはほとんどすべてが英語だ日本のユーザー開拓にはこれがもう一つの高いハードルになる。記入が日本語で出来るようになっても、圧倒的多数である海外の参加者と議論や情報交換が出来ないのであれば、結局あまり使う人は増えないだろう。優秀なプロフェッショナルでしかも英語が堪能、という人材は日本では本当に少ない。日本のプロフェッショナル同士が盛り上がるためには、日本語による日本人同士の意見交換が活発にならないと、今のままではLinkediの価値が伝わりにくい。この点に対処すべく、日本に拠点を置いて取組んで行くというLinkedInの意図はわかるが、実際に流行るかどうか判断するのは時期尚早というべきだろう。



もっと大事なこと


もっとも、『だから、日本では流行らない可能性が高い』と結論づけることは簡単だが、今回LinkedInに関わる多くの情報を頂いて、過去の情報も読み返してみると、それだけで済ましてしまうわけにはいかないのではないかという、焦燥感にも似た苛立を感じざるをえない。


インターネットのビジネス活用が遅れていると言われることの多い日本だが、それでもインターネット、特にWeb2.0以降は多数の意見の集積した集合知とそれを効率的に利用できる人と出来ない人の格差が加速度的に広がっていることは実感できる。これが生み出すレバレッジ効果にはものすごい力がある。ほとんどが日本語環境に閉じていてさえそうだ。しかも日本のSNS環境にはまだノイズが相当に多くて、ビジネスに関しては発展途上もいいところなのにだ。それがどうだ。Liknedinに垣間見える、的が絞られたプロフェッショナルの集合知が熟成されてそれを自由に使いこなすことができることのすごさ、そのポテンシャルははかりしれない。日本語環境だけ、しかも、自社か業界団体等で細々としか議論を深めることのできない日本のビジネスマン/エンジニア/プロフェッショナル等と、LinkedInのようなサービスを利用して、世界的に相互に密接な関係をつくり、議論を深める海外のプロフェッショナルとの差は開く一方になるであろうことは容易に想像がつく。これは日本人ビジネスマン/エンジニア/プロフェッショナルにとって恐るべきことではないだろうか。



やっぱり英語は必要?


私が海外の仕事を始めたころに盛んに言われたのは、なまじ英語が堪能でも話す内容がない人の言う事は誰も聞いてくれず、英語が不得意でも技術等で優れた人の言うことは相手の方から理解しようとアプローチしてくるということだ。だから、英語より仕事の実力が大事というわけだ。英語を使う側も、大抵は翻訳のような緻密な仕事をやるわけでなければ、テクニカルタームを理解して、一応の『てにをは』を伝える程度の英語で十分だった。ずいぶん沢山の商社マンとも一緒に仕事をしたが、この人はすごく英語がうまいと感じた人はほんの一握りだった。『英語は意図が通じればいい』『英語より度胸と愛嬌』という時代だったのだ。本当に必要な情報は本としてまとまっており、日本語への翻訳もすみやかに行われた。


だが、これからはそんなわけにはいかなくなるだろう。当時は、LinkedInなどという恐るべき代物はなかったが、今はあるのだ。優秀なビジネスマン/エンジニア/プロフェッショナルほど、お互いに世界中の優秀なカウンターパートとリアルタイムに語り合い、より優秀で案件にジャストフィットな人を見つけ、どんどん自分の仕事を広く高く深くしていくことが確実だ。それには非常にレベルの高い英語力を必要とするだろうし、逆にレベルの高い英語が使えるほど、レベルの高い議論ができるだろう。だから、こんなサービスは日本では流行らないと高を括っていないで、個人としても、企業としても、英語の力を飛躍的に上げて、ここで起きている世界のビジネスの最前線を理解し、LinkedInのようなサービスを使いこなすべく不断に努力する、という不退転の決意で取組む必要があると思う。私のこの見解にどのくらいの人たちが共感してくれるのかまったく定かではないが、少しでも感じるところのあった人は、自らの問題に置き換え、真剣に向き合ってみることを衷心よりお勧めする。