twitterへの疑問に回答案を書いてみた/twitter night 3に参加して

10月2日(金)、急遽、twitter Night 3 に参加できることになったので、出かけてみた。登壇するパネラー陣が非常に豪華でバラエティーに富んでいることもあって、楽しみにしていたのだが、実際大変参考になるお話が沢山あり、自分でも随分色々なことを考えさせられた。



<開催概要>


【日時】2009年10月02日(金)18:00-21:30
【場所】内田洋行 ユビキタス協創広場 CANVAS
    104-8282 東京都中央区新川2-4-7
     http://bit.ly/DUDgT

【形式】トーク&ライブ イベント
【費用】3,000円
【主催】KandaNewsNetwork,Inc.&株式会社内田洋行

【登壇者】下記、神田敏晶氏のイベント紹介ブログご参照

 2009年10月2日(金)twitter night vol.3のお知らせ!#twn3 - KandaNewsNetwork KNN



<感想>


発言も140字以内で、という触れ込みなので、パネルディスカッションではあるが、twitterの実演というのがコンセプトだ。最初は司会のストーリーラインに沿って話が進んだが、徐々にtwitterらしくテンポよく様々なトピックで溢れて来る。だが、朝まで生テレビ*1のような、論争で収集がつかなくなる、というのではなく、自然にストーリーラインが浮かび上がって行く。そして、そもそも豪華なパネリスト陣なので、喚起されるイメージは非常に豊かだ。この『雰囲気』こそ、良くも悪くも、twitterを象徴しているのだと思う。


ブログとtwitterは違う進化をしていると言う、登壇者の一人、ジャーナリストの津田大介氏のコメントは私も本当だと思う。だから、というのは多少強引かもしれないが、このtwitter nightでの話も、いざブログにまとめようと思うとなかなかに難しい。よって、実況とか感想の範囲を若干超えることになるが、当日出た質問および、このブログを書くにあたって湧いて来た疑問点に対して、パネリストの意見を参考にして私が回答案をつくる、という形式でまとめてみた。



失言は許されるか?


セッションの一番始めに、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が提起した問題でもある。twitterは140文字と短いため、誰でも比較的に気軽にふと思ったことを書ける。だから、あまり構えず自然体での発言が出てきやすい。今まで世に出る事のなかったようなものも出てくる。反面、失言をしやすいとも言える。如何に気軽につぶやけると言っても、twitter上の発言は公共の場での発言であることに違いはない。思わぬ失言から炎上というパターンは、先行する2ちゃんねるでも、ブログでもさんざん繰り返されたわけで、当然twitterも、というよりtwitterこそ炎上が起きやすいのではないかという懸念も当然だろう。一方、この失言を完全に封じるべき、というコンセンサスができると、twitterの面白さが半減することになる。確かに、悩ましい構造上の問題を抱えているように見える。(実際、産経新聞twitter上の失言で謝罪するような事例も起きている。)


司会の神田敏晶氏が、会場に、『twitter上の失言は許せるか?』という質問を投げかけたところ、会場は8割方『許せる』、という回答だったtwitter nightに集まるような人は、まさにアーリー・アダプターそのもので、これからもしかしたら広がって行くであろう、日本の普通の潜在ユーザーの意見全体を代表したものとは言い難い。ただ、それでも、先進ユーザーが失言に寛容というのは、注目すべきことに思える。実際、twitterユーザーが全般に寛容で優しいというのはパネリストのほぼ一致した見解のようだ。しかも、Yahoo! shopping の中の人やベンチャー家電のセレボの岩佐氏のように実際にビジネスにtwitterを利用している人も、ブログ等では非常に厳しいユーザーが twitterでは理解があって優しいと感じているのは、企業でtwitter利用を考えている人にとっては刮目すべき事実と言えるのではないか。匿名であっても、自分の発言一覧によってその人となりを知られてしまう事、また、フォロアーが多いと、各自のタイムラインから発言がすぐに見えなくなってしまう事等、設計上の理由なのか、現段階ではまだ何らかの理由で寛容な人を主にユーザーとして惹き付けているのか、厳密にはわからないが、twitterの今後を占うにあたり良い徴候の一つと考えられる。


ただ、政敵の失言を待つ政治の世界、企業の経営者等、同じレベルで寛容なユーザーに甘えて良いわけではないだろう。そもそも日本の伝統的な大企業は、風評リスクを非常に怖れる傾向がある。社員に、企業の名前でtwitter で語ることを許容する企業はまだ少数派だろう。朝日、毎日、産経のような新聞社のtwitterへの参入も、収益悪化に歯止めがかからない現状から出た窮余の一策と思われる。アジャイルメディア・ネットワークの社長、徳力基彦氏も、自身の書き込みには非常に気を使っていると言うし、公聴会等の twitterでのリアルタイム報告で、『tsudaる』という流行語を生んだ、津田氏も、ブログと比較した場合のtwitterの許容度の広さを認めながらも、twitterで報告されていると思うと、従来のイベント等で珍しくなかったオフレコ発言(ここだけの話、というやつだ)は、だんだんやりにくくなっていると語る。また、今後位置情報との連携ができて、しかも写真投稿等が増えると、違った意味での不寛容(プライバシー問題等)を喚起する可能性もある。


だが、この『twitter上の寛容』というのは、何でも禁止したがる最近の日本人の不寛容な姿勢を鑑みると、福音と言っていいと思う。リスクをすべて過剰に封じ込めて、『安心安全』というのは、時に非常に自閉的で、日本の活力を明らかに削いでいる。この寛容な環境を守るためにこそ、『あまりにひどい個人攻撃はしない』、『差別発言は控える』等、ある程度のモラルとコンセンサスができあがっていくことが望ましい。『寛容の中の責任』を、せめて今twitterを使っている人には求めたいところだ。



フォロー/フォロアーの数が爆発したらどうやってまとめればよいか?


これも、佐々木氏が最初に提起した問題でもあるが、twitterに参入する人がもっと増えてきて、フォロー/フォロアーの数が増えてくれば、人間の注意(アテンション)の限界をすぐに越える事になる。何らかの集約がなければ、ゴミの山と化すのではないか、という懸念である。すでに、サードバーティーを中心に、様々なまとめ/整理の試みは始まっているし、今後は間違いなく、もっと増えて行くだろう。ただ、興味深いのは、必ずしもまとめる必要はない、とするプランナー/ライフロガーの川井氏のような意見である。大量のフォロアーを抱えると、いつtwitterを開いても、ほぼ今の瞬間の発言で埋め尽くされる。そして、その大量の『現在』の一覧の中に思わぬ発見や出会いがある。これがtwitterの最大の魅力であるという。


正直なところ、実際に自分でも体験してみないことには何とも感想の言いようのないことではあるが、インターネットというメディア自体がすでにそういう性格を濃厚に持っている。インターネットの普及と共に、事の本質を過去に遡って深く考えるというタイプの思考(縦志向)より、横に広がった『今』の出来事から直観的に好きな物を見つけて、大量のデータの中に自分を位置づけて行くあり方(横志向)が増えて行く方向にあるtwitterはまさにそれが本格的に始まっている象徴とも言える。人々の思考の形やコミュニケーションのあり方が、今また大きく変わって行くことが予感される。



企業で使えるか?


セレボの岩佐氏が断言するように、ブログで企業を語ることは、日本では必ずしも成功していない。少なくとも、既存の伝統的企業には普及しているとは言い難い。だが、一方で岩佐氏は、twitterによるユーザーコミュニケーションのほうが機能していると語るYahoo!ショッピングの中の人も、現在までのところ、twitter利用による目に見えるビジネス上の成果はないが、ユーザーのYahoo!ショッピングに対するイメージを変えることには成功しているという。どうやら、まだ断言はできないが、ビジネスで最も重要なユーザーとの交流/コミュニケーション構築にとって、秘めたポテンシャルはありそうだ。ただ、そのポテンシャルを引出す技量を持つ人はまだ多くはない。また、そもそも、twitterが日本にもっと普及するのかどうか、あるいは普及した場合のユーザー母体の意識に質的変化があるのかどうか、まだ不透明なことは多い。


日本ではこれからもっと普及するか?


徳力氏によれば、世界一のtwitterユーザーを持つ米国では、ユーザーの80%がモバイルからの利用だという。日本でも、twitterは本来携帯電話に相性のよいサービスと考えられる。ところが、現在の日本twitterユーザーはパソコンからの利用が中心で、しかも都市部に集中していると言われている。これは携帯電話からでは会員登録ができないという物理的な制約も大きいようだ。日本でtwitterを運営するデジタルガレージの江田氏によれば、近々この問題は解消するという。となると、日本での普及は、まさにこれからということになるかもしれない。では、本当に今後地方/既存携帯ユーザーにも普及が進んで行くのだろうか。


注目すべきは、小説家の内藤みかさんの、『仲間の小説家にtwitter小説への参加呼びかけたら、10人くらい乗って来たのに、ケータイ小説では乗ってこなかった』という発言だ。ケータイ小説は、ユーザーも書き手も地方が中心と言われることと符合する。twitterはまだ都市部にしか普及していないだけでなく、ユーザーのメンタリティーという点でも、地方ユーザーとはかなり違うのではないか。


地方での携帯電話の使われ方を想定すると、twitterも相互のコミュニケーション・ツールとして利用される可能性が高い。となると今のところ、『mixi』や『リアル』『mixi』って何? 女子高生は『リアル』でSNSするのが常識 | ロケットニュース24のような既存のサービスに割り込めるかどうかが鍵だ。地方では、都市部以上に、固定化した窮屈な人間関係から解放されるために、このようなコミュニティー・サービスを利用する人が多いと言われている。そのためサービス側には完全な匿名性の担保であったり、発言ごとに公開/非公開をコントロールできる等、サービスにきめ細やかさが求められる傾向があると言われる。今のところtwitterにはそのような機能はないし、今後もそのような方向で進化するとは考えにくい。とすると既存のライバルを凌駕していくのは意外に難しいかもしれない。ただ、地方でも、自分のパーソナリティーを使い分けることには熟達している若年ユーザーが、twitterの特性を理解して、既存サービスと使い分けて行く可能性も十分にある。



その他


当日は、twitterのパネルディスカッションの他に、スポンサーの内田洋行のプレゼンテーションや、セレボの岩佐氏による新製品(デジタルカメラ)の紹介、AR三兄弟によるARサービスのプレゼン等もあり、盛りだくさんだった。だが、後で考えるネタを沢山いただいた、という意味でも楽しいセッションだった。