アンテナとして注目してみたい『オガワカズヒロ』

発表会開催概要


(株)モディファイ(小川浩CEO)とグランドデザインカンパニー(株)(小川和也社長)が、リアルタイム・ソーシャルメディアマーケティング・ソリューション提供のための新レーベル『オガワカズヒロ』を立ち上げ、去る、7月15日にその発表会が行われた。当日私も出席させていただいたのだが、エントリーを書くのが大変遅くなってしまった。すでに、いくつかのネット系メディアでは記事もあがっており、概要/詳細についてはそちらを確認していただくとして、私は例によって、若干の感想を書き留めておこう思う。


開催概要は下記の通り。


開催日時:  2009年7月15日(水)
開演時間:  18時30分 受付開始時間: 18:15
場所:    東京21cクラブ コラボレーションスペース
       千代田区丸の内1-5-1新丸の内ビルディング10階


公式ニュースリリース
http://www.gd-c.com/pdf/20090715_gdc_press.pdf

オガワカズヒロ公式サイト
ソーシャルブランドクリエイター:オガワカズヒロ

オガワカズヒロ on Twitter
オガワカズヒロ(小川浩+小川和也) (@ogawakazuhiro) | Twitter


参考記事
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20090716/200268/?ST=nmg_page
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20090617/197849/?ST=nmg_page
“ファストマーケティング”実現に向け、「オガワカズヒロ」立ち上げ - Enterprise Watch Watch



着眼点


二人の名前をミックスして名付けられた『オガワカズヒロ』が最適なソリューションを提供できるかどうかは、今後の具体的な活動に注目するしかないが、今回二人の小川氏から語られた着眼点、問題意識は、同種のマーケティングコンサルティングに携わる人にとっても参考にできると思う。ただ、ニュース記事のいくつかを読んでみたが、案外その真意は伝わりにくいのではないかと感じた。よって、その着眼点をピックアップして、私なりの解説をしてみたい。



消費行動のプロセスの変化


今、インターネット時代の消費行動のプロセスとして、長くマーケティングで使われて来た、AIDMA(Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動))に代わって、AISAS (Attention(注目)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)) が注目されている。この行程にはユーザーの消費行動の決定因子として、インターネットが深く関与し、インターネットを利用したコミュニティー内での口コミが大きな影響力をふるっていることが見て取れるため、ソーシャルメディアマーケティングという至極曖昧な概念が立ち上がりつつある。最近では、様々なマーケティング手法がまことしやかに語られ、大変賑やかではある。だが、その一つ一つを精査してみると、まだ確立した理論と呼べるものは少なく、口コミマーケティングと言っても、ブログに商品やサービスのことを書かせて、それを追いかける程度だったりする。そもそも口コミがそのような単純な方法でいつでもおこせるものなのか、はなはだ疑わしい。


小川和也氏にここのところを聞いてみると、メディアの記事にもある通り、『いろいろなマーケティング手法が存在するが、どれも売れた理由は後付でしかない。実際、購買動向を見てみると、さまざまな情報を元にアクションをおこしている。特定のメディアで発信するのではなく、網羅性が必要だ』という主旨のお話で、型通りの手法に拘泥されないクレバーさが感じられる。



ソーシャルメディアマーケティング』のポテンシャル


では『ソーシャルメディアマーケティング』は威力がないのかというと、正反対で、まだ手法は必ずしも確立しているとは言えないが、巨大なポテンシャルがあることは誰しも認めざるをえない。この点興味深い論考がある。7月21日付けのTechcrunchの『企業のソーシャルメディア利用状況と収益成長率』という記事だが、米国でソーシャルメディアを活用している企業100社をさらに分析して、最も多く利用している企業を「大御所」、利用数の少ない企業を「壁の花」に分類したところ、「大御所」はこの12ヵ月で収益を平均18%伸ばしており、「壁の花」は6%の低下となっているという。ただ、ソーシャルメディア利用と収益の因果関係はまだ疑問、とされている。『ポテンシャルは誰もが感じているが、因果関係はまだはっきりとはわからない』というニュアンスがここからも伝わってくる。

企業のソーシャルメディア利用状況と収益成長率 | TechCrunch Japan



日本でも『ソーシャルメディアマーケティング』の注目度は上がっており、ユーザー企業側の参入意向は少なくないが、まだ信頼できる策を持って説得してくれる提供者が少ないと言われている。『オガワカズヒロ』の狙いもまさにここにあると言ってよさそうだ。できるだけ様々なソーシャルメディアを利用すべく、小川浩氏の(株)モディファイが「SM3(Social Media Marketing Modifier)」というツール(Twitterのほか、写真投稿共有サイト「Flickr」、動画投稿共有サイト「YouTube」、SNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)「Facebook」や「mixi」、ブログサービス「Ameba(アメブロ)」など30以上のサービスへの投稿を一括管理するもの。投稿の執筆、承認といったワークフロー管理機能も備える。)を提供し、ユーザー企業に実際の使い方を指導しながら、ソーシャルメディアの内懐に招き入れ、そこで得られた情報を利用して、臨機応変にマーケティング・ソリューションを提供するというコンセプトだ。実際のユーザーの動向を見ながら、最適解を見つけるということになると、最後にはマーケターのクリエイティビティと対応能力が競争力の源泉ということになる。



『ファスト・マーケティング


ただ、その不確実さを補う策として、『ファスト・ファッション』ならぬ、『ファスト・マーケティングを提唱する。最近は、ファッション業界という流行に依存する不安定な業界で、極めてスピーディーに情報を収集して、それを元にスピーディーに商品提供して、また反応を見ながらスピーディーにラインアップを変更していく、『ファスト・ファッション』をベースとする、ZARA、H&M等が非常に注目されている。小川和也氏は、渋谷の109で売れているのは、消費者の声を受けて2ヶ月単位で商品を出す事ができる店舗だという。素早く商品を投入する一方、一早く市場の事実情報で変更していく手法は、不確実性の高い昨今の市場では、ファッション業界ならずとも理にかなっている。



アンテナとしての『オガワカズヒロ』


このように小川浩氏のツール(テクノロジー)と小川和也氏のクリエイティビティーで網羅的に『ソーシャルマーケティング』を行う試みは、いわば、不確実な市場に突き出したアンテナの一つとしても興味深い。『ソーシャルメディアマーケティング』興味を持つ人は、そういう意味でも『オガワカズヒロ』をウオッチしておいてはどうだろう。