やはりiPhoneが主役じゃないのか?


アンドロイド携帯 日本で発売開始


5月19日、ドコモとソフトバンクの携帯電話の夏の新機種の発表があり、その中にグーグルのアンドロイドを採用した機種があって、話題になっている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2009051900420
http://www.mediologic.com/weblog/archives/001866.html


昨年来、市場での期待感が大きかったアンドロイド携帯だから、話題になって当然だし、アップルのiPhoneが日本で開拓しきれなかった、スマートフォンの潜在市場をいよいよグーグルが刈り取りにくる、というような意見も少なくないため、関係者は誰しも好奇の目で見守っている。もちろん私もその一人だ。



自分という中途半端なiPhone ユーザー


ただ、携帯電話ユーザーとしての私は、直接の開発者レベルの詳細な分析眼を持っているわけでもなければ、マニア的な執着を持っているわけでもなく、後期アーリーアダプター、乃至、前期アーリーマジョリティーあたりに位置する、平凡で中途半端なユーザーなのだと思う。 *1 だから、iPhoneが日本で発売された後も、まず iPod Touchを買って、そのうちGPS、3G回線、カメラの有無の違いの大きさに気づいて、iPhoneを購入するという、実に非効率なことをしでかした。よって、iPhoneユーザーの端くれに名を連ねたのは、昨年秋(晩秋)のことだ。


そんな私だからこそ、iPhoneが日本でどの程度売れるか、という点については比較的冷静な分析もできたと自負している。その当時書いたブログエントリーによる予想は、大方あたっていたと思う。周囲は一種の興奮状態だったが、ロジカルに考えれば、日本で急速にiPhoneが普及するようには思えなかった。
iPhoneは日本で売れる? 売れない? - 風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る


だが、実際に自分がiPhoneを手にしてみると、正直なところ本当に驚いた。所謂携帯情報端末は、古くはシャープのザウルスから、Palmソニーのクリエ等、連綿と使い続けて来たて、その時代なりに満足感の高いデバイスもそれなりにあったものだが、購入後の満足度がこれほど高いものはおよそ初めてと言っていい。過去使い続けて来たものの多くは、その時代に実現できるトップレベルの技術が惜しみなくつぎ込まれていたものだが、iPhoneは必ずしもそうではない。カメラの画素数などわずか200万画素だし(今回発表された、ソフトバンクモバイルの「アクオス ショット933SH」(シャープ製)のカメラは、なんと1,000万画素もある!)、最近は大抵の携帯電話には備わっている赤外線通信機能もない。実のところ、これはiPhone が日本市場で期待されたほどは売れていない理由として取り上げられてきた要素の一つでもあり、私自身も当初iPhone購入に二の足を踏んでしまった。
http://digimaga.net/2008/06/9-reasons-why-iphone-does-not-sell.html
 

買えばわかるiPhoneの魅力


購入後の満足度が高いのは、私だけではなく、大抵のiPhoneユーザー言えることらしい。(満足度90%というデータがあるようだが、私の周囲の人の実感とも一致する) 通常、『購入前の期待値と購入後の満足度との差』は、その購入者をリピーターとするために、決定的なファクターとなることが多いが、 iPhoneの場合は、その点申し分ない。しかも、日本の購入者の多くは、言わば専門家とマニア層であり、厳しい批評家でもあることが多いことを考慮すれば、そんな購入者相手に、期待を上回る満足感を与えるというのは、並大抵のことではない。


説明しにくい魅力


ただ、具体的にどこが良いか、ということを語るのは、これも実に難しい。もちろん、専門的な答えを求められれば、インターフェースがどうのとか、iTuneのサービス性がどう、とか語ってみせることくらいはする。そういう意味では、ソフトのバージョンアップによる機能強化、iTune Storeで購入できるソフトによる、デバイス全体の進化等は、特筆すべきところで、携帯電話そのものを買い換えるより、小額で購入できるソフト一本のほうがずっとワクワクする進化を実現してくれることも少なくない。だが、人には語っても、その説明では自分の感じていることを100%表現できてはいない。うまく説明できないが、心地よい/美しい/楽しい等々・・もっと複合的で全体的な何かなのだ。だから、アンドロイド携帯が同様の機能を実現できるとしても(あるいは多少機能が勝っていても)、私自身が買い換えることはないだろうし、品評しようにもさほどの魅力を感じない。


言語化しておくべき


もちろん、アンドロイド携帯の日本市場における意義は非常に大きいし、高い壁に囲まれたガラパゴス島日本にとっての黒船になる可能性は十分にある。さらにその黒船に乗って、海外市場拡大に再び乗り出す道が開かれるかもしれない。また、iPhoneの本格的なライバル登場で、健全な競争が起きて、市場活性化に寄与することになるかもしれない。そういう意味での期待はすごく大きいし、社会現象としてのアンドロイドの面白さは、社会現象としての iPhoneの面白さを凌駕する可能性も十分あり得る。だが、それは自分の肌感覚のレベルの問題とは違う。かねてから私が主張しているように、商品をコモディティにして価格競争の不毛な争いに巻き込まれたくなければ、まさにiPhoneのように、『説明しにくいけど手放させない』商品やサービスとすることが大原則だ。やはりこれはあらためて、徹底的に自己分析を行って、もう少し説明可能な理解にしておく必要があるようだ。


ドラマは始まったばかり


もっとも、日本の携帯電話市場全体で見れば、iPhoneはやはりマイナーな存在であり、私のこのような感想もマニアのたわごとの類ということになるかもしれない。だが、如何に自分たちが少数派と言われようと、このデバイスの面白さ、ワクワク感、WAO Effectは、圧倒的だ。そして、私以外の他の保有者も絶賛している人が大変に多い。この非常に不自然なアンバランスさ、すなわち、気づいている人は熱狂しているのに、携帯電話市場ではマイノリティーである不思議。このダムに水がどんどん溜まって行く感じとでも言うのだろうか、大変化の兆しを感じざるを得ない。ドラマはまだ始まったばかりだ。