AMNブログイベント「インターネットが選挙を変える? 」に参加して


4月24日(金)、AMNブログイベントvol.8 「インターネットが選挙を変える? 〜 Internet CHANGEs election 〜」に参加した。
河野 太郎さん(自民党 衆議院議員)、鈴木 寛さん(民主党 参議院議員)が登壇者として確定しました。|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)


概要は以下の通り。


■日時:4月24日(金) 19時00分〜21時30分 (18:30開場)

■会場:デジタルハリウッド東京本校イベントホール(御茶ノ水

■プログラム
・第一部 米国事例紹介と日本の公職選挙法の解説
・第二部 パネルディスカッション

■登壇予定者(順不同)

・第一部 
田中慎一さん (フライシュマンヒラード・ジャパン株式会社 代表取締役CEO)
伊藤伸さん (構想日本

・第二部 パネルディスカッション

田中慎一さん (フライシュマンヒラード・ジャパン株式会社 代表取締役CEO)
佐藤大吾さん (NPO法人ドットジェイピー理事長)
西村豊さん(株式会社フォーナイン・ストラテジーズ代表)
伊藤伸さん (構想日本
楠 正憲さん (ブロガー・国際大学GLOCOM 客員研究員)
河野 太郎さん(自民党 衆議院議員
鈴木 寛さん(民主党 参議院議員) 


■主催・運営:アジャイルメディア・ネットワーク株式会社

■共催:株式会社フォーナイン・ストラテジーズ



政治に関する数少ないエントリー


もともと私のブログは、政治に関してはほとんど取り扱って来ていない。もちろん、政治的な問題点に触れることは少なからずある。だが、少なくとも特定の政党支持を表明したことはない。不偏不党で、ポジション、先入観、偏見等にとらわれることなく、出来る限り自由に物事の本質に迫ってみたいとの思いもあって、あえてできるだけ政治的な問題とは距離をおこうと基本的には考えて来た。ただ、その数少ない例外が、オバマ大統領選挙、およびインターネットの政治利用を(公職選挙法についての言及を含む)促進すべき、という趣旨の内容のエントリーである。だから、『オバマ現象のカラクリ』*1の共著者である、フライシュマンヒラード・ジャパン株式会社 代表取締役CEOの田中眞一氏のお話には何より興味があったし、どう調べてもなかなか現場の実態がよくわからない、公職選挙法について知る機会を探していたこともあって、今回のセミナーには非常に高い期待と興味を持って臨んだ。

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オバマ現象


オバマ大統領の選挙において、史上初めて、いわば『インターネット選挙』が行われ、圧倒的な勝利を納めたことについては、すでに多くの人が語って来たことでもあるが、まだ必ずしも正しい理解が進んでいるとは言えず、特に日本の場合は、公職選挙法という壁もあるため、大抵の人は、オバマ選挙の実態を身を以て感じることができないでいる。インターネット小口献金の仕組み、というようなシステム構築の妙であったり、ケネディ大統領がテレビを効果的に利用して大統領選挙を乗り切ったように、オバマ大統領が既存のメディアの延長上にうまくインターネットを使った、というようなレベルの理解に留まっている人が多いように思う。確かに、それぞれ、一面の真実ではあるのだが、オバマ現象』とまで言われた今回の歴史的イベントの本質に触れているとは言い難い。


オバマ現象』が本当に興味深いのは、その背景に『コミュニケーション革命』が起きていることがありありと実感できるからだ。しかもそれはまだ続いている。というより、大統領選挙という第一幕は終わったが、現職大統領としてこれから何を起こして行くのか、米国に何がおきて行くのか、革命の本番はこれからだ。第一部の田中眞一氏のプレゼンテーションは、まさに事の本質をついたお話だったと思う。この『コミュニケーション革命』の要素をオバマの大統領選挙に感じたからこそ、私も普段は書かない政治的な問題をブログにも取り上げ、自分なりの分析も試みた。それは、政治手法の枠を超えて、また、米国だけに留まらず、日本にも大きな影響がおよぶだろうし、企業経営やマーケティングにも看過できない影響を及ぼすことは確実だと、私も当初から感じていた。



オバマ大統領の共感コミュニケーション


米国でも、日本でも、というより世界中で価値感の多様化はとめどなく進行して、社会の旧来の枠組みを揺さぶり、共同体を解体し、コミュニケーションの基盤が揺るがされている。物語もイデオロギーも解体されて来ている。田中氏のプレゼンテーションでも取り上げられていたが、このような状況では、社会の『共通認識』や『常識』が成立しない。これが、マーケティングを生業とする者にも、ものすごいストレスを与えている実態は、何度か私自身語って来たが、それ以上に政治家にとって大変困った事態だろう。米国で言えば、共和党の枠組みでも、民主党の枠組みでも掬い取れないことを意味する。また、米国のように、世界の中核にいて、世界のリーダーを自認するような国にとっては特に、世界中の価値感が多様化することの困難さは筆舌に尽くし難いだろう。それに比べれば、資本主義と共産主義の対立など、何と簡単なことか! これに『力の論理』であったり、田中氏の言う『一元的価値観』に基づき、是と非を明確にして説得に頼るコミュニケーションで対処してきた米国は確かに行き詰まってきている


これに対して、オバマ大統領が当初から、『包摂的』な態度とコミュニケーションで、分断/対立を極力さけようとしてきたことはよく知られているが、今にして思えば、もっと徹底した、『共感コミュニケーション』へのシフトが意図されていたようだ。そして、この情報過多で、価値観の超多様化した時代に、あらためて共有の土壌づくりから取組んで来た。そしてそれはインターネットがなければできなかったし、インターネットによってそれが実現できることを史上最も理解していた大統領ということになる。



日本にもチャンスはある


このように見て行けば、インターネットの本質を理解したリーダーと彼に共感する人々がいれば、すっかり時代に取り残され、若年層も興味を無くしてしまったかに見える日本の政治にも、改革のチャンスがあるのではないかと思えてくる。村社会的なコミュニティーが急速に崩壊して、大きな物語を無くしてしまった日本は、もしかするとアメリカ以上にそれが悲痛なまでに必要な状況なのではないか。しかも、価値観があまりに多様化してしまうと、個々の論点や政策で大きな母体を括ることが出来ないが故に、得票数としてまとまりにくいとなれば、勢い政治勘のするどい政治家ほど政策議論から離れ、そのかわりに利益誘導を第一として地盤看板に頼り、政局を泳ぎ回ることを優先ことになるのも無理からぬところがある。個々のモラルを語る以前にシステムがそのように出来ているわけだ。



公職選挙法という怪物


そして、日本の政治システムの中核に居座って、情報流通を阻み、政治家の活動をゆがめているのは、どうやら『公職選挙法』という怪物のようだ。今回のセミナーの主要な議題の一つで、特に構想日本の伊藤氏のご説明や、政治の現場におられて、インターネット利用にも明るい、自民党河野太郎氏や民主党鈴木寛氏のお話を聞いても、何より先ず、公職選挙法の改正は優先課題と言うべきだろう。しかも政治家のお二人が異口同音に語る通り、インターネットに関わる部分だけでなく、日本の選挙制度そのものが牢固にして身動きが取れなくしてしまっている現状の全体象を理解して、包括的に変革することが不可欠というご意見には、まったく異も無く賛成である。


河野氏によれば、公職選挙法による選挙では、紙ビラに制限があるため、自分の選挙区で一世帯に一枚のビラを配ることもできない。そのビラを使い回すことも禁じられている。しかも個別に配りに行く事もできないという。確かにこれでは、有権者も政治家の活動や政策をきちんと知る事ができないと思う。


情報が有権者に届きにくいという実態は、明らかに若年層の政治離れを助長している。加えて、既存メディアがダーティーなイメージを煽るから、政治/政治家の暗くダーティーなイメージがすっかり出来上がっているのが今の日本だろう。民主党の鈴木氏によると、議員インターンに参加した若者について見ると、事前のアンケートでは80%が政治嫌いと答えるのに、インターン終了後には、これが20%まで減るのだそうだ。如何に、現在の政治に関わる情報流通のパイプが詰まっているかわかる。やはり一日も早く、公職選挙法は改正すべきだと思う。この点では私も今回のセミナーで説得された一人と言っていい。



インターネット/ブログに期待すること


今回のパネルディスカッションの司会役をつとめた、マイクロソフトの楠木氏の、『インターネットでやって欲しいことは?』という質問に対して、河野氏、鈴木氏とも、選挙期間外であれば、特に個々の政策のことについて発言することは問題ないので、ホームページ等に乗っている個々の政策についてできるだけ沢山書いて欲しいとのこと。確かに、これはブログを含むインターネットの発展により始めて可能になったことであり、今なら、直ちに始めることができる。


もっとも、インターネットが如何に浸透してきたとは言っても、政策についてそれなりの発信をする人はまだ少数派だとは思うが、それでも、インターネットがなかったころに比べれば格段の違いであることは間違いない。しかも、その点については、田中氏によれば、オバマ大統領の選挙でも、400人の専属スタッフが15のネットコミュニティーに対して繰り返し主張を発信し、その内容に対して、賛成/反対の意見表明がインターネットを通じてなされた結果が可視化されて、大きな影響力を持つようになった。書く人とそれに対して賛否を投票する人の割合は、およそ2%と98%だが、そのわずか2%の最初の発信が米国の政治の潮流を変える起点となったという。


これは、私自身が政治にインターネットをもっと利用できるようにすべき、という主旨で書いたエントリーでふれたことだが、マスメディアは、広告宣伝に金を出すクライアントのことは非難できない傾向があるし、あからさまな偏向とまでは言わなくても、口をつむいだり、不当に小さな記事として処理してしまうことは珍しいことではない。政治権力にも時として完全には中立ではいられないかもしれない。だから、この状況に風穴を開ける可能性としてのインターネット、中でもブログの可能性は、もっと追求されるべきだと思う。


留意すべきこと


もちろん、ネットのネガティブな部分、誹謗中傷であったり、間違った二次情報の過剰な流通などへの対処はこれまで以上に必要だろうし、そもそも、時流や一時的な熱気に動かされやすい『メディア民意』の危険性には十分な注意が必要であることは言うまでもない。田中氏が言うように、小泉元首相の郵政選挙によって、日本でもサイレントマジョリティーもやり方によっては非常に大きく動くことがわかった。これが諸刃の刃であることは、政治を学問として取組んだ人には常識だろう。そういうことも含めて、制度の設計やモラルの醸成が必要であることは決して忘れてはいけないとは思う。


情報の裏取りという点で、意外にコロンブスの卵的なご意見だったのは、鈴木氏の、『質問メールを送るのがいい』というお話しで、鈴木氏は、メールインタビューには、なんらかの形で必ず回答すると約束された。確かに、このような双方向性があたり前になれば、ブロガーの発信もクオリティーが上がるだろうし、プラスのスパイラルとなる可能性がある。


匿名性の許容


ただ、ブログを書く立場から一つだけ希望を申し上げておけば、ある程度の匿名性を許容して欲しいということだ。発言に責任を持つことは大事だし、それなくしては、何も始まらないが、日本の実情では、まだまだ会社等の団体の所属やそのポジションを明らかにしながら、自由に意見を言うのは難しいケースが多い。意見の良し悪しではなく、そもそも政治的な発言を公的に行うこと自体を問題にされることがあまりに多い。確かに、誹謗中傷等の排除には記名制が有利でもあり、匿名性がそういう誹謗中傷の温床になる怖れがあることはわかる。だが、私達でもそうだが、所属意識が薄まっている若年層でさえ、従来以上に自分の所属する環境で過剰なまでに『空気』を読むことを余儀なくされているという現実もある。当面は、所属やポジションではなく、意見の質そのものを見ていただけるとありがたい。


日本のチャンス


日本は携帯電話を含むインターネットインフラは世界のどこに出しても恥ずかしくないレベルにあり、識字率も高い。しかも、オバマ大統領の『共感』のコミュニケーションは本来日本文化と相性もいい。そうい意味で、日本にもブレークスルーを起こせるチャンスは十分にある、ということを思い出させていただいた。今回の登壇者および主催者にあらためて感謝したい。


<ご参考>

Yahoo!みんなの政治 最新の政治動向が分かる

http://www.fleishman.co.jp/sc/sc_blog/

構想日本

若者と政治を結ぶ NPO法人ドットジェイピー

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http://www.taro.org/blog/

http://suzukan.net/