『第3回ジオメディアサミット』について少しだけ語る

4月3日(金)に開催された、『第3回ジオメディアサミット』に少しだけ参加した。
開催概要は、以下の通り。

日時:2009年4月3日(金)18:30〜21:00 (18:10開場)
  :懇親会:21:15 〜
会場:立教大学池袋キャンパス 8号館、8202 号室
  http://www.rikkyo.ac.jp/access/pmap/ikebukuro.html    
テーマ:「盛り上がるジオメディアとは?」
主 催:ジオメディアサミット運営実行委員会


http://lab.cirius.co.jp/%E7%AC%AC3%E5%9B%9E%E3%82%B8%E3%82%AA%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%88

今回は、私自身、非常に参加を楽しみにしていたのだが、その前の会議が長引き、プレゼンも半分少々しか見る事ができなかった上に、別件があって懇親会も出れなかった。よって、レポートを書くのも多少気が引けるのだが、短い時間の参加ながら、とても刺激を受けたサミットだったので、少しだけ感じたことを書いておこうと思う。



『メジャー』になりつつあるジオメディアサミット


当初は、地図マニアと業界人で、ひっそり立ち上がった印象のある、このジオメディアサミットだが、3回目を迎えた今回は、マイナーでもなければ、マニアのものだけでもない、ネット系の集まりの中でも、最も熱気に溢れたメジャーな集まりという感じだった。プレゼンのレベルも高いし、会場に集まった人達も、業界人を超えて、広く各界からの関心の高さを伺わせる雰囲気だ。確かに、昨今のIT・ネット系の最もホットで、かつ、高い将来の発展のポテンシャルを感じさせてくれる領域の一つと言えそうだ。



先鞭をつけたGoogle


先鞭をつけたのは、ここでもGoogleであることは誰も異論がないところだろう。Googleマップで詳細な衛星写真を見た驚き、まるで神の目の視点を持てるようになった感動を与えてくれたGoogle Earth、賛否両論の様々な議論を呼びながらも人々をあっと言わせたストリート・ビューなど、地図という素材にこれほどのポテンシャルが眠っていたことに、驚いた人は多いと思う。



誰もが手にするナビゲーション・プラットフォーム


一方、ある程度商品化が軌道に乗りながらも、非常に高価で、限られたユーザーの贅沢品だったカーナビも、デフレ化が進み、さらには、携帯電話やスマートフォンの高機能化と相まって、誰もが手軽に持てるコモディティになりつつある。すでに、日本では、携帯電話の50%、約5,000万台のGPS対応機があるとサミットの司会からの紹介もあったが、このGPSに加え、磁気センサー(方位磁石と言ったほうがわかりやすいだろうか)も遠からずもっと普及するだろうから、誰もが意識せずに高性能なナビゲーション・プラットフォームを手にする時代が今まさに来ようとしている。そして、その上に、様々な可能性が花開こうとしている。



本来地味な業界


従来の地図関連の業界関係各社は、真面目だが地味な印象がある。地道な情報収集や骨の折れる制作作業を黙々こなすことが求められる仕事、ということもあるのだろうか。昨今ではインターネットや携帯電話のコンテンツとしても、地図サービスのニーズは多いため、ある程度の対応は進めて来ているとはいえ、その範囲を超えて、自らネット関連サービスを大きく拡充していこうという柔軟性のあるタイプは少ないし、またその種のイノベーションやエンターテインメントを地図に持ち込もうとすることに、潜在的な忌避感を持つ人も少なくない。一生懸命脇目をふらずに頑張って、品質の良い、ローコストな地図をつくり、それを支える技術を高めて行くことこそ、自分たちの生き筋と信じている人が多いようにさえ見える。



大転換期


だが、Google参入後以降、はっきりとこの市場の潮目は変わった今回のサミットの雰囲気を嗅げば、いやでもそれがわかる。今後のこの業界の行く末を具体的に言い当てることは難しいが、方向性については、他業界に数多くの事例があることもあり、まず大方の予想がはずれることはあるまい。多くのコモディティ化に見舞われた業界や市場と同様の悲喜劇と主役のめまぐるしい交代が起きてくるだろう。プロシアの鉄血宰相とうたわれた、ビスマルク『賢者は歴史に学び、愚者は経験(または体験)に学ぶ』という名言を深い悔恨と共に思い出す人も増えるだろう。Googleを初め、多種多様な参入者により急激に活性化しつつあるこの業界では、業界の過去の経験は急速に役に立たなくなりつつある。一方、今の地図業界が参照できる歴史のほうは、履歴の短いインターネット業界内でさえ数多く、しかも貴重な教訓に満ちている。今回のサミットに参加して、自らこの流れを感じようとしている業界人なら、同じ事を感じている人は多いはずだし、そうであれば、きっと厳しい競争にも生き残っていけるだろう。



転換を象徴する『位置ゲー


今回のサミットで、何よりこのことを代表しているのは、『位置ゲー』だ。これは、モデレーターシリウステクノロジーズの三好氏の定義によると『携帯電話より得られる位置情報を用いたゲームの総称』だそうだが、(マニアを除けば)本来、それ自体は無味乾燥な地図に、エンターテインメントの王者、ゲームを持ち込もうというものだ。方向音痴の私など、わかりやすい地図は非常にありがたい代物だが、場所がわかればそれ以上見ていたいとは思わない。むしろ難しい本を読むのと同様、頭が痛くなってしまう。そんな感じの人は、私の友人にも多い。おそらく世の中、そんな人だらけだろう。だが、地図でサービスや商売を仕掛けたい側から見ると、それでは困まる。もっと地図に『スティッキー』な要素を付与したいと考えるのは当然のことだ。何とか地図を日常的に何度でも見て欲しい。だから、ゲーム要素を持ち込むというのは、地図サービスを手がける人の一部には昔からあった発想ではある。ところが、いざ具体的に取組もうとすると、意外にゲームシナリオの設定が難しい。だが、GPS付き携帯電話のおかげで、一気にブレークする可能性があるのではないかと私自身も考えてはいた。そういう意味で、現在のゲームの面白さだけではなく、将来に繋がる様々な可能性を見せてくれるプレゼンであり、対談だった。(マピオンの加藤氏の「ケータイ国盗り合戦」とコロプラの馬場氏の「コロニーな生活☆PLUS」のプレゼンおよび対談)


人が動けばキモチも動く、「ケータイ国盗り合戦」と「コロプラ」開発者が語る「位置ゲー」の世界【ジオメディアサミット】:MarkeZine(マーケジン)



さらなる進化が約束されている


しかも、この延長上には、 Augmented Reality の技術進化がある。『世界カメラ』や『電脳コイル』を知る人なら、なるほどと同意していただけるはずだ。(Augmented Realityについては、下記の私の過去のエントリーをご参照いただきたい。)実空間と電脳空間が合体し、ゲームという要素で人々の想像力が活性化していく。そうなった時、地図サービスは黄金期を迎えているだろう。いや、もう一つ大事な要素を忘れかかっていた。『コミュニケーション』だ。日本の携帯電話サービスの中核にある要素だ。しかも、そもそも地図というのは、『コミュニティの形成』や『コミュニケーションのきっかけ』等に大変相性が良い。このあたりのセオリーをきちんと踏んで行けば、サービスとしても、まだこれから日本のスタンダード入りするようなものも沢山生まれてきそうだ。


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今後も期待大


ちなみに、『位置ゲー』の加藤氏と馬場氏だが、加藤氏はマピオン社員なので、業界の中の人だが、馬場氏は外の人ということになる。こういう競争は大変望ましい。切磋琢磨して、全体が大きく活性化する期待が持てる。業界人が追いやられて行く懸念を語り過ぎたきらいもあるが、加藤氏のような新世代の業界人もちゃんと育っているのは喜ばしい。次回のサミットも、業界の今後も本当に楽しみだ。


<ご参考レポート>
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第3回ジオメディアサミット | Digital Life Innovator