『「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティング』に参加した感想

開催概要


12月18日に開催された『「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティング』に参加した。
12/18(木)開催「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティングのお知らせ|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)

タイトル:「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティング
日時: 12月18日(木) 19時30分〜 (19時00分開場、22:00時終了予定)
場所: 株式会社野村総合研究所 本社
協賛: 株式会社ユビークリンク
運営: アジャイルメディア・ネットワーク株式会社


参加ブロガーの優れたエントリー


このミーティングについては、すでに参加されたブロガーからすばらしいレポートが上がって来ている。中でも、下記4人のブロガーのエントリーはわかりやすく、しかも大変高い問題意識をベースに書かれている。


"「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティング"に参加 : チミンモラスイ?
http://kokogiko.net/m/archives/002221.html
POLAR BEAR BLOG: カーナビもクラウド化するよ、という話。
渋滞情報をクラウドで「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティング | Digital Life Innovator



簡単に感想を書いてみる


本件については、多少個人的な事情もあって、私自身は内容にコメントしにくい立場にもあり、しかも、上記のエントリーで報告としてはほぼ完璧にカバーされていると思われるため、ブログを書くのもやめておこうかとも思ったが、ブロガーとして参加させていただき、お土産までいただいたこともあり、何がしかのエントリーを上げておくべきだろうと考え直した。よって、ごく簡単に感想だけ書いておきたい。当日の説明は上記のブロガーの方々のレポートを読んで頂き、さらに興味がわけば私のエントリーも読み流していただきたい。



『全力案内』の躍進


(株)ユビークリンク社の携帯サービス、『全力案内』迷えるあなたを全力案内ナビ!ジグザグオールナビゲーターは、簡単に言えば、『タクシーを利用したプローブ情報等のリアルタイム情報に強みのある簡易カーナビサービス』と言っていいだろう(徒歩ナビもあるため、厳密にはカーナビだけではない)。昨年の10月1日がサービス開始というから、かなりの後発ではあるが、すでに20万人近い会員がいるというのは、チミンモラスイ!の中の人も書いているように、短期間に目覚ましい勢いで伸びて来た優良サービスと言っていい。プローブカーという比較的ヘビーデューティーで、本格的なサービスにするには大きな投資が必要と考えられる領域に、小規模な単位の会社で参入する敢闘精神は脱帽もので、私も大変注目していた。成功の目安をどのあたりにおくのかという問題はあるが、少なくとも客観的には充分成功と評価されるべき実績だと思う。



日本のカーナビビジネスの天井感


ただ、最近はその勢いは鈍化してきたと感じていたのだが、実際にプレゼンを聞いていても、BtoCモデルとしての天井、というか壁を感じておられる様子が伝わって来た。市場の客観情勢を見れば、それは無理からぬところだ。カーナビはGIS系のBtoCモデルとして、別格と言っていい程のプロフィットを生んで来たビジネスと言えるが、すでに新車販売台数比較で見るとピークに到達しつつあったところに、通信速度や記憶媒体の容量等のインフラが格段に向上してきて、参入が容易になってきた。その結果、『廉価版ナビ』が市場に溢れ、従来カーナビには手が出なかったクラスターのユーザーの潜在需要開拓は進み、商品(サービス)としてのライフサイクルが伸びて(衰退を先送りして)再び第二の活況を呈しているかのように見えていた。それがちょうど全力案内サービス開始時期と重なる。


ただ、そもそも価格センシティブなクラスターのユーザーが主要なターゲットであるところに、参入者が急増するため、収益確保は非常に厳しい。しかも、日本の自動車市場は若者の自動車離れが鮮明で、軽自動車の販売で辛うじて新車販売増を稼いでいたが、そろそろ天井に到達しつつあった。典型的な『コモディティ市場』の様相だったのである。とすれば、如何にプローブタクシーを使った渋滞回避で多少の差別化ができたとしても、利便性の限界収益は限りなく縮小することは避けられない。まして、その最中に原油高(=ガソリン高)、金融危機(経済危機)と続き、現在では自動車販売台数は底が抜けてしまったような状況にある。



各社を束ねるハブへ


ユビークリンクの首脳も、BtoCサービスが自社のコア・コンピタンスの決め手と考えている訳ではなく、既にプローブを手がける自動車会社(トヨタ、ホンダ等)、ナビメーカー等と協力関係をつくり、プローブ情報提供のハブとして生残ることを模索しておられるようだ。ただ、広義のITS全般で見ても、自動車会社、複数の官庁が関与している中、技術的優位性だけでは優位のポジショニングを確立していくこと、ビジネスをスピーディーに展開していくことはかなり骨が折れそうだ。かなりの政治力も求められる。一般論だけで語るのは失礼な話だが、プレゼンやその後のお話を聞いた限りでも、まだ決めてを欠く印象がある。



海外展開が活路?


私の個人的な意見を言えば、『優秀な少人数の技術者集団』でここまでビジネスを展開できるユビークリンク社なら、将来的に活路を見出すべきは海外展開だと思う。日本で先行したカーナビだが、廉価版ナビの市場は海外で先行して急拡大したし、まだカーナビ自体がほとんど販売されていない市場は、今後廉価版ナビの市場ポテンシャルが大きいとも言える。しかも、日本の場合は、交通インフラ整備は、特にカーナビが必要な都市部では一段落しており、『渋滞情報』のマージナルな付加価値は下がる一方だ。それと比べて、道路建設がどんどん進む中国、インド、ロシアのような地域では、中央管理的な交通規制、交通情報管理など望むべくも無く、プローブカーのバリューは大きいはずだ。しかも、こういう道路建設情報が中央管理されていない地域では、プローブ情報は道路地図作製コスト削減に大きく寄与する可能性が高い。


簡単な感想、と言いながら、少々書き過ぎ過ぎてしまった気がする。いずれにしても、『ビジネス』という観点でも、高いポテンシャルを持つ優良な会社、というのが全体を通した私の印象である。