恐慌でも生残るために今しておくこと

歯止めのかからない株式市場


最悪の金融恐慌には歯止めがかかったという見解もある一方で、世界恐慌の奈落へという懸念はなかなか払拭されないようだ。日経平均株価も下落に歯止めがかからない。23日の東京市場も、10日につけた年初来安値を更新し、一時は8,000円割れ寸前まで下落した。市場関係者はすでに、バブル後最安値の 7,603円を意識しているという。金融危機への対応の様子を見ていれば、各国とも景気対策がうまく進むとは考えにくい、とは誰でも考えるだろう。株式市場も更なる景気悪化を織り込み始めたということだ。



景気悪化は避けられない


景気悪化、という観点で、日本国内外の情報をネットであたってみて、すぐにやめた。あまりに悪い情報が多過ぎるのだ。しかも、本番はこれからだ。日本のここ数年の若干の景気の良さは、ほぼ自動車等の輸出産業と中国特需等新興国需要に支えられて来た。中でも、自動車産業など、利益のかなりの部分は米国に支えられているため、米国の景気悪化と円高の影響をもろに受けることになる。日本で強い企業の代表格といえる、トヨタでさえ、08年の世界の販売台数は、98年以来の減少が予想されているし、収益も前年比30〜40%減という見込みがすでに出て来ている。一方の中国特需も、中国自体が米国への輸出で大量の貿易黒字を稼いで来たわけだから、それに乗っかった日本企業も、相当大きな影響を被らざるを得ない。そもそもそれ以外の日本企業、特に内需中心の企業は、今回の『リーマンショック』以前に、死に体とも言える企業も多かった。一体これから、どうなるのだろうか。



今できること


だが、一企業、一個人としては、座して死を待つわけにはいかない。生残るために、今何が必要なのか、冷静に見極めて、できることを淡々とこなして行くしかない。


不況期には、不況に強い企業、不況だからこそ増える需要というのが必ずある。それは、何で、そこから何を学んでおくべきなのか。


私の考えるところでは、少なくとも下記の3つの動向は、どの業種であれ早急に勉強し直しておくほうがよいと思う。



1. 低価格だがセンスがいい

2. 『不安感』にうまく対処する

3. シフト先を押さえる




低価格だがセンスがいい


日本は、バブル後の長い不況の間に、所得階層が二極化して、『ロウアーミドル』と言われる、年収300万円〜600万円のクラスの割合が増えた。そして、このクラスにうまくくいこんだ企業が勝利をおさめて来た。業態で言えば、食品スーパー、コンビニ、ネットショップ、100円ショップが典型例だ。反対に、もっと上の所得層をターゲットにしていた、百貨店などは大きく収益を落としている。 


せっかく、脱した不況も、再度さらに大きく長い不況がくる恐れがあるが、当然そうなると企業はこぞって、コスト削減、低価格合戦を始めることになる。この低価格合戦の勝者は当然生残ることになる。だが、それで生残れるのは、各業態で1社か2社という本当に厳しい選別が始まる可能性が高い。衣料品のユニクロ、100円ショップのダイソーのような企業だ。


だが、如何に安くても、それだけでは、過当競争を生残ることはできなくなる。コストをかけない付加価値競争が勝ち残る鍵になる。今後は『ロウアーミドル』の上に属する『アッパーミドル』クラスが、従来の年収を維持できないで、さらに『ロウアーミドル』にシフトしてくる可能性は高いし、さらには、収入は『ロウアーミドル』だが、自分がこだわるものは、『アッパーミドル』向けの消費を一点買いする消費者も、だんだんとそれが難しくなって行く懸念さえある。


この一点買いとは、最近よく言われるようになった、BMWで100円ショップに行く』ような行動のことである。個人としての収入は低く、本来安い物を買わざるを得ないが、車だけはどうしてもいいものを買いたい。親と同居しているため、所得自体は低くても、可処分所得が高い『パラサイト・シングル』と呼ばれるような人によくあるパターンである。



ナチュラルキッチン 


では、具体的には、どのような企業が該当するのだろうか。


まず、100円ショップでありながら、人気輸入雑貨やオシャレなインテリア・ショップにあるようなセンスの良い商品を扱っている、ナチュラルキッチンがそうだ。非常に低価格なのに、オリジナル開発商品が30〜40%という高い割合いなのはすごい。商品もオシャレだが、ラッピングがまた可愛らしい。最近の若者は高級ブランドに興味を示さなくなったと言われるが、確かに、個人の物を選ぶセンスのなさをブランドで隠すような購買行動は、知性の欠如を感じさせる。ナチュラルキッチンの商品を選ぶ人達はその対極で、いかにもクレバーな感じがする。


01年に大阪で雑貨屋として始まったというから、かなり新しい。関東進出は03年5月で、一号店は吉祥寺である。場所の選択がまた絶妙だ。同じ年の9月に名古屋にも進出している。名古屋店も、ブログから評価を見る限り、ただの100円ショップの扱いではない。デートコースにさえなっているようだ。

雑貨 ナチュラルキッチン NATURAL KITCHEN



ZARA


もうひとつ、忘れては行けない企業が、ZARAである。


こちらは、世界中に3.000店舗も展開する、スペイン発祥の企業で、特にヨーロッパでの人気が高いと言われる。日本でもすでに各所に展開しているが、個人的には六本木ヒルズ店の印象が強い。六本木ヒルズには、他にも高級ブランド店が数多く出店しているが、おそらく女性客が一番買い物をしているのは、 ZARAだろう。何より、実にセンスがいい。しかも、最新のトレンド、流行のデザインである。そして、製品は高級ブランド店に劣らないのに、価格は本当に安い。紳士用のスーツなど、普通なら10万円を軽く超えてしまいそうなところを、3万円前後で売られている。なぜこんなことができるのか。


アパレル業界は、時々の流行服を(意図的な流行創出を含めて)大量に供給するための事前準備期間が必要とされる。Wikipediaによれば、新製品販売までに9ヶ月かかるのが業界平均だという。ところが、ZARAは最短1〜3週間で出荷する。商品の切り替えも早く、3週間で店の品揃えが丸ごと一新するとまで言われる。しかも、トヨタやデルのような、ジャスト・イン・タイム方式を採用しており、いち早く最新ファッションの製品を提供できるだけでなく、在庫も少なく、商品の回転率も高い。他の企業が、懸命に流行の把握につとめ、流行を創出するために大量に生産したあげく、当てがはずれて大量の在庫を抱えてしまうのに比べると実に画期的だ。そもそもZARAは広告宣伝費をかけないことでも有名だ。抜群のデザイン力とセンスを持つ一方で、このシステムを採用することによりセンスがよく最新の流行の品を安く提供できるというわけだ。

ZARA Japan / 日本 - オフィシャルサイト



更には


その他、家具の『アイリスオーヤマ』、最近では、『IKEA』、アメリカに生まれの大型会員制の倉庫店の『コストコ』あたりが注目だ。こういう企業を研究すると、不況だからこそ、自分たちが勝つ、という決意が見えるようで、とても清々しい。


アイリスオーヤマ株式会社 | IRISOHYAMA.Inc
イケア・ジャパン株式会社 - IKEA
Costco Japan


本日は、少々長くなってしまったので、次回、再度この続きを書いてみたい。