AMN主催「先端企業に学ぶ消費者との対話への取組み」に出席した

10月2日(木)に行われた、AMN主催の「先端企業に学ぶ消費者との対話への取組み」〜カンバセーショナルマーケティング最新事例〜に出席した。

10月2日(木)開催「先端企業に学ぶ消費者との対話への取組み」~カンバセーショナルマーケティング最新事例~|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)


開催概要は以下の通り。


■開催概要
 日時:2008年10月2日(木) 16:30開場 17:00開始(19:30終了予定)
 場所:海運クラブ(赤坂見附より徒歩10分、永田町より徒歩1分)
    2階ホール
 地図:こちら
 定員:200名
 会費:無料
 対象:企業広報・宣伝ご担当者様
    広告代理店ご担当者様


■タイムテーブル

 16:30 開場
 
 17:00 キーノート・スピーチ  AMN 坂和 敏

 17:10 『先端企業に学ぶ消費者との対話への取組み』
  ◆事例紹介1:ソニーマーケティング株式会社 
   Sony Japan | ソニーグループ ポータルサイト
          広告宣伝部門 
          ウェブコム企画部編成課ウェブプランナー(兼)制作課
          遠藤 康史氏
 17:50
  ◆事例紹介2:アサヒビール株式会社 
   アサヒビール - その感動を、わかちあう
         酒類本部 マーケティング本部 宣伝部

         横山 和幸氏

 18:20 休憩

 18:30 『AMNがご提供する新しい広告手法とキャンペーン事例』
      AMN 上田 怜史

 19:00 質疑応答 〜Q&A〜
     パネルディスカッション形式で行いますので、質問がある場合は
     休憩時間内にお伺い致します。

 19:30 終了予定



カンバセーションマーケティング


カンバセーショナルマーケティングというのは、マーケティングに詳しくない人には、耳慣れないかもしれない。米国発の新しい概念の一つである。日本では、最近、AMN取締役で、自身著名なブロガーでもある徳力基彦氏が講演や雑誌記事等で、取り上げておられる。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20070914/134982/

http://www.idg.co.jp/expo/bbsns/program/detail.html#D-17

http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20080702/164359/



広義の『口コミ(バイラルマーケティング』を同根としながら、最近では、もう少し多様な効果と意味が発見され、期待され始めているようだ。



口コミ(バイラルマーケティング


口コミ(バイラルマーケティングについて言えば、インターネット導入以前からすでに重要な概念として存在していたが、インターネットと相性が良く、特にweb2.0と言われる動向の中でユーザーが積極的に発言し、それゆえにネット発の情報の信頼性が急速にあがる現代の市場では、企業はいやがうえにも向き合わざるを得なくなって来ている。中高齢者や、リタイアした団塊世代を含めて、消費者のインターネットへの接触は非常に多くなっており、メディア接触時間という点で見ても、明らかにテレビ等の旧来メディアからもっとシフトすべき状況になって来ている。巷間言われるようなテレビコマーシャルが消えてなくなるようなことは考えにくいが、非常に高価な一方で、具体的な効果がわかりにくく、しかも、双方向性という点で、インターネットに劣るテレビコマーシャルに割かれている予算は、かなり大きな単位でインターネットにシフトしていくのは自然な流れだろう。


ただ、ブログプロモーション一つ取っても、まだ決まったセオリーと言えるほど確立した手法があるわけでもなく、逆に『炎上』に象徴されるようなリスクもある。(リスクへの対応にもセオリーはない。)ブロガーと企業との関わりは、単純な企業とメディアのようなわけには行かない。そういうコンテキストの中、企業もブロガーとの距離の取り方には慎重にならざるを得ない。企業側から言えば、情報を流しても優遇しても、好意的なエントリーを書いてくれるとは限らない。書かないかもしれないし、最悪、批判的なエントリーを延々と書かれる可能性も否定できない。他企業に先立ってブログプロモーションに取組む企業にとっても、まだまだ手探り状態と言わざるを得ない。



プログプロモーションとカンバセーションマーケティング


『カンバセーション』と聞いて、セミナーの主催者が何を狙っているかをすぐに理解できただろうか? インターネットの時代には口コミが重要と言われながら、実際には、まだ、企業が消費者を誘導する手法が変わるという程度にしか受けとめられていなかった印象がある。如何にポジティブな口コミを起こすか、という観点しかないから、ネガティブな反応が出だすと、とたんに腰が引けてしまう。だが、発信する消費者の側が徐々にクレバーでスマートになってくると、むしろ、企業と消費者を対等と見て、対話の中から真の問題を見つけ、商品やサービスの新しい形や価値を見つけ、そうして企業と深いコミュニケーションをすることによって、企業の真摯な姿勢を心から受け止めた消費者がブログエントリーのような形で、説得力のある情報や記事を発信していく。対等の関係だから、時には非常に手厳しい反応をもらうこともありうるが、そういう消費者の反応はむしろ企業にとっては本当に貴重な情報であり、結果的にその問題点を乗り越えることができれば、企業の競争力は飛躍的に伸びて行く。これが最も美しいシナリオだろう。


この日はブログプロモーションの先進事例ということで、アサヒビールの横山氏およびソニーマーケティングの遠藤氏のプレゼンテーションとそれに引き続く質疑応答のセッションがあった。非常にリアリティのある事例紹介であり、大変参考になった。特に、ソニーマーケティングの遠藤氏の場合、自らブログを書く体験を通じて、仕掛ける側と仕掛けられる側の両方の立場を理解して数々の実験的な試みに取組み、失敗さえも改善のための貴重な情報として蓄積している様子を伺うことができた。(遠藤氏の個人ブログは、YAS的なモノ。   ) お二人のプレゼンおよび質疑から、特に印象的だったり、教訓的なお話を以下ピックアップしておく。




質疑応答(一部プレゼン内容を含む)ピックアップ

  • どのような種類のブロガーを呼ぶのか? 

イベントでブロガーを呼ぶ際には、種類の違うブロガーを網羅的に呼ぶことが大事。PV(ページビュー)が稼ぎやすい、アルファーブロガーだけでなく、PVが少なくても商品のファンであるファンブロガー、レビューブロガー等すべて期待する役割が違うので、すべて呼ぶ必要がある。(遠藤氏)

ブログエントリーが集約的に参照できるように整理しておけるため、社内での報告書とすることができること、次の商品開発時の情報として使えること、および次の年のイベントと比較が容易にできるメリットがある。(遠藤氏)

  • ブロガーを集める際には自社?会社(宣伝会社等)経由?


宣伝会社経由。ブロガーとは直接接触しない。(遠藤氏)

  • 炎上したときの対応

ルールは事前に決めておく事。ブログを閉じてはいけない。(遠藤氏)

  • ブログプロモーションの役割/効果について

ブログプロモーションにむく商品とそうではない商品がある。消費者との双方向のコミュニケーションを取ることができる。(横山氏)

マス広告宣伝は認知拡大に効果的であり、ブログのようなネット系の手法では、よりメッセージを浸透させることができ、両者は補完関係にある。どちらかだけではだめ。また、TV宣伝など短期間しか展開できないが、ネットなら継続性がある。(遠藤氏)

ブランド向上につながることは調査で出て来ている。(横山氏)


直接ブランド向上に結びつけるのは難しいが、『漢方』の効果はある。また、ブロガーイベントに参加した人の『ファン度』は上がる。クレーマーも呼ぶとファンにすることができる。そういう意味でもファン作りにはなっている。(遠藤氏)


  • ブロガーイベントと普通のユーザーイベントとの使い分けは?

昔はユーザーイベントのみ。今はブロガーイベントも織り交ぜているが、特におもてなしは変えていない。効果は違うようだ。(横山氏)

  • 成果や効果指標は?

消費者とのコミュニケーションが大事であること、広告だけでは限界があることは、ほぼ社内の共通認識になっており、特に成果指標等を求められることなく、社内では企画が通る。(横山氏)

検索結果と記事数。 (指標ではないが)サーチエクイティの向上になると考える。(遠藤氏)

  • バイルへの取組みは?

これから力を入れる必要性を感じており、重要視している。PCそのままではだめだろう。まだモバイルサイトは立ち上がったばかり。(遠藤氏)

自社サイトにはあまり自社の情報は載せていない。飲食店やレシピの検索など、ユーザーが行動に使える情報提供に力を入れている。(横山氏)


  • 他社が最初の一歩を踏み出すにあたってのアドバイスは?

何がお客様にとって楽しいか、ユーザー視点で考えてみるとよい。(横山氏)

ブロガーイベントの会社に相談するのが手っ取り早い。(遠藤氏)

  • 上司が反対したらどうするか?

初めのころはリスク管理部署の人を説いてまわったものだが、リスクに比べてゲインが大きいからやるというコンセンサスができてきている。もはや上司にも抵抗感はない。(横山氏)

実際自分が物を買う時どうしているか聞いてみる。価格コムを使っているという人が多い。価格コムからソニーオフィシャルサイトに来る人の比率は多いことを説明して納得してもらっている。(遠藤氏)



当日は、AMNの新しい広告手法とキャンペーン事例のプレゼンもあったのだが、長くなったので、今回はこの部分のコメントは他のブロガーの報告にお任せする。



セミナーの意義


先進的な取組みをされている両社でも、基本的にはかなり泥臭い現場での苦闘があることをあらためて知ることができた。近い将来、企業の広告宣伝は激変することは確実だ。その時に、先頭ランナーになるのはこういう会社であることがよくわかった。また、ブロガーとしての自分の振る舞いや、活動範囲の広がりが楽しみになったという意味でも意義あるセミナーだった。