「Wire Free Gadgets Network」ブロガーミーティングに参加して

Wire Free Gadgets Network」の報告は・・


一昨日の9月29日に、AMN主催の「Wire Free Gadgets Network」ブロガーミーティングに参加させていただいた。
9月29日(月)「Wire Free Gadgets Network」ブロガーミーティングのお知らせ|アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)


参加者の多くは、ガジェット好きのバリバリのエンジニアだった印象がある。(もちろん中には私のような、技術の最先端情報という小判を前にした猫族もいらっしゃったかもしれない。) 今回のミーティングの参加資格は『ブログを書いていること』だったので、私も何がしか書くことを期待され、それはそれでうれしいことではあるのだが、そういう『バリバリ族』に対して、『猫族』は一体何を書けばいいんだろうと、プレゼンテーションが始まった瞬間から固まってしまったことをまず白状しておこう。私とて、準備してあったガジェットは一通り知っており、私なりの興味は大いにあるのだが、残念なことにこの『バリバリ族』の中では、ただの『猫の横好き』でしかない。


そんな私の不安は、すぐに的中した。紹介系のブログとしては、今や日本でもトップクラスと私が日頃から評価している、p-article氏のチミンモラスイ?で、完璧なエントリーが本日あがっていた。「Wire Free Gadgets Network」ブロガーミーティングに参加 : チミンモラスイ? その場で起きたことをまとめてあるだけでなく、必要なリンクをきちんと整理整頓しておりこんであって、ネット空間に広がる関連情報が見事に吸い付くようにポイントに添えられている。おそらく、普通の人が同じレベルのリンクを見つけて、全体を理解しようとしても難しいだろう。これは、p- article氏レベルの情報力と収集整理能力を持ち、しかも、今回のミーティングの内容を、大局観を持って頭の中に再構成できて初めてできる技だからだ。


こんな優れたエントリーが一方にあって、私が乏しい知恵を絞って、レポートを書いても、『あのねー、デジタルカメラで写真撮ると、すぐにパソコンでもチャンピーでも見れてねー、それでそれで・・・』というくらいの内容にしかならないことは初めからわかっている。


しかたがないので、せめて私が今回のミーティングで感じたままを少しだが書いておこう。(これで、かんべんして下さい。AMNの皆さん、NTTCommunicationsの皆さん。ちなみに、懇親会で出された貴重な食料を食い漁ったのは私です。) このエントリーを読もうと思う人は、必ずまず、上記のチミンモラスイ?のエントリーを読んでおくこと。そうしないと、何の話しをしているかまるでわからないはずだ。


『半歩先』


私の頭にずっとあったのは『半歩先』というキーワードだった。


『半歩先』というのは、ビジネスサイド/マーケティングサイドから見ると、実に貴重なあり方だ。どんなにすばらしい技術やビジネスモデルであっても、進み過ぎているためにユーザーがついてこれずに日の目を見ないものは掃いて捨てるほどある。もっとも、先進的で、進んではいるけれどユーザーがついてこれる(すなわちビジネスとして成功する)という意味で、『半歩先』を行くことは、一見簡単なようで実に難しい。


今回のミーティングは、その『半歩先の技術』が成功裏に立ち上がりつつある現場を体験できた場であったように思う。(本当の成功と評価されるためには、ビジネスとしての成功が必要ということになる。) 今回実現されたことは、現段階で市場にある製品やサービスでも、ユーザーが工夫をすれば(あるいは工程が少し長くなることを我慢すれば)、同様のことは実現できないことではない。だが、有名なネットウオッチャーのotsuneさんの名言、『n-clickを 1-clickにすると商売になる。1-clickを0-clickにすると革命になる』がプレゼンテーションで紹介されていたが、ほんのわずかな差が決定的になるのがインターネットのサービスだ。参加者は皆、今回の技術が革新的ではないかもしれないが、必ずなんらかの形で(それだけでビジネスにならないとしても)機能実装されていくだろうと感じたのではないだろうか。



ビジネスになる『半歩先』


チミンモラスイ!のp-article氏も次のようにおっしゃっている通り、この技術のプレゼンがあった後チームに分かれて、『何ができるか』について討議した際には、現実的な(ないしビジネス的な)トピックが多かった印象がある。 これこそまさに皆が、半歩先を意識していた証拠だろう。

思いのほか現実路線の話題が多かったのが意外でもありましたが、僕は3年後の携帯電話の端末がどのようなものになっているのかということを妄想しておりました。「Wire Free Gadgets Network」ブロガーミーティングに参加 : チミンモラスイ?


私は、確かに現実的すぎてつまらないと自分でも感じながら、やはり自動車、バイク、自転車、特殊作業をしている人間(炭坑作業、水中作業等)など、自分で自由にカメラを操作できない状況でも、どんどん映像(動画、静止画共)を送ることができれば、それをモニターで沢山の人(ないし限定された人)が集中管理をして、指示を出すタイプのサービスにはすぐに実装できるのではないか、という主旨のお話をした。これで、GPSで取得された位置情報が自動的に付与されれば、簡易リアルタイムストリートビューなどすぐ出来てしまうだろう。(ストリートだけじゃないが。)なんらかのタグ情報をこれに張りたくもなる。



これからどうするべきか


これから最終的なビジネスとしての成功するための鍵は、次の3つがポイントだろう。


  • ビジネスモデルの構築(ないし整合)
  • 機能改善(品質、使用性、操作性等)
  • 関連した応用/周辺技術の開発



当たり前すぎて語るのも恥ずかしいが、まず実際に利用できるシーンをできるだけ数多く収集し、優れたビジネスモデルを構築していく必要がある。(だからこそ、こういうミーティングが行われたのだろう) そして、品質や使用性/操作性で実用域に入っていないのであれば、何としても短期に改善しないといけない。 そして、この段階からは飛躍的な技術を思いつくことを指向するより、応用技術、周辺技術等を積み重ねることができるような体制をつくることが望ましい。


この3番目は、実際のところ言うは易しだが、市場へ投入するスピード競争の要求もあって、おろそかになりがちだ。特にベンチャー企業が『半歩先』の技術ですばらしくても、ビジネスで成功できない理由になりやすい。 発想がすばらしくて、ユーザーを引きつける『半歩先』技術は、資本や人材が蓄積している大企業の標的だ。すぐに美味しいところをごっそり持って行かれることになる。だから、市場に投入した後(ないし投入するとき)、後追いや真似がしにくいように、複雑にしておくことは必須だ。そして特許を『群』として申請できれば申し分ない。 もっとも、このあたりの対応こそ、 NTTCommunicationsレベルの企業にはお手の物かもしれない。



『半歩先』を戦略とするシャープ


『半歩先』を戦略として宣言して、実行しているシャープのような会社もある。如何にも商売上手という感じだ。

松本氏はシャープの製品開発の目指すところとして、「半歩先戦略」を紹介する。半歩先について松本氏は「一歩先ではない、半歩先に意味がある。一歩先では、技術の先進性で、あっと驚くものが作れるが、商品化しても、市場のインフラが整っていなかったり、ユーザーが使いこなせないなどの面がある。半歩先くらいの少しの先進性なら、市場で受け入れられる」と説明する。


 この戦略について松本氏は、シャープ初のカメラ付きケータイ「J-SH04」を例に挙げる。「J-SH04以前にも、カメラを積んだケータイは存在したが、デバイスが大きかったり、サービスが連動せず、普及しなかった。しかしJ-SH04はCMOSをケータイ用に開発して消費電力をケータイの部品として遜色のないものにできた。これにより新しい市場を開拓できた」と語り、シャープの半歩先戦略を解説した。


【WIRELESS JAPAN 2006】 シャープ松本氏、「半歩先戦略」を語る

『半歩先』巧者となるには?


では、『半歩先』巧者となるにはどうすればよいのか。

そもそも、こういう問いが成りたつのが、『半歩先』の特徴のようなものだが、確かに個人や組織の努力である程度達成可能と考える人は多い。だから、下記のエントリーのような、ノウハウが語られることも多い。

ゼロからはじめる! プログラミング - Part4 今日からできる!半歩先を行くプログラマになる方法:ITpro
“半歩”先を行くリサーチとは?--覚えておきたい7つのポイント - CNET Japan


ピーター・ドラッカー*1の有名な問い、『素質が無くても努力をすれば経営者になれるか?』と同じ種類の問いとして、『努力すれば半歩先巧者になれるのか?』という問いに、私はYesと答えてよいと考える一人だ。 今回の取組みは、 NTTCommunicationsの社内有志の集まりから出来上がってきた成果、というお話だったが、そういう取組みがどのように成果を生むか、という点にも注目したいと思った。



これからも同じ、という訳にはいかないだろうが・・


但し、この点については、私の研究課題の一つでもあるのだが、スピードが極端に上がっている市場では、半歩先巧者として勝ち続けるためには、今までと違う新しい要素が必要だと思う。昨日の超長期は今日の短期、昨日の数歩先は今日の半歩先と考える必要があるからだ。 『猫族ブロガー』はこんなことが大いに気になったりする。