市場はすでにルール無用のリング状態か?!


突然現れる競合相手


普段、自分の仕事や個人的な関心で、できるだけ情報網を広げて行こうという気持ちは、普通の人以上であると自負しているつもりだが、最近は時としてふと不安になることがある。 特に仕事の領域では、自分自身が異業種をまたいで転職をしてきたこともあり、同僚と比較しても感心の幅は広いつもりでいるのだが、時としてそれでも驚くような情報の欠落に直面することがある。


というのも、それは、時として思わぬ業種から競合が現れることが非常に多くなっており、突然その確認が必要となることが本当に増えているからだ。


7月15日のエントリーで嵐の前の静けさの中のIT・電機業界 - 風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る、IT・電機業界が嵐の前の静けさにある、と書いたが、ある意味ではすでに嵐の中にいるというべきだろう。特に、自分たちの業界では、Googleの影響によるコンテンツのデフレ化、広告モデルへの一元化の流れなど、大きな脅威(嵐)となっている。 だから、ネット系の業種であれば、さほど珍しいとも思わない。



ITネット系だけではない


しかしながら、まだ比較的既存の業界・会社の枠組みが残っていると考えられる他業種でも、よく調べてみるとさまざまな変化と変化の予兆があることがわかる。そういう意味では実は市場の大変化はすでに起きているとも言えなくはない。


例えば、次のような状況に気づいているだろうか。(期間の設定の仕方等、多少荒っぽいのはご容赦いただきたい。)

  • 若年層に最も人気と知名度のある銀行は新生銀行(手数料がほとんどかからない、海外でのATM利用が簡易で手数料の安い等)
  • 海外旅行の取り扱い人数が最も多いのはH.I.S.(売上金額はJTBが一位)

それぞれの業界の人にとってはすでにあたりまえのことかもしれないが、様々な業界に渡って沢山の事例を上げることができる。

  • インターネット広告 vs  既存のマス広告(テレビ、新聞、雑誌等)
  • カメラ vs  携帯電話
  • フリーペーパー vs  雑誌/新聞
  • 垂直統合(すりあわせ技術) vs  水平分業


You name it !
(というのはまさにこういう時に使う表現だろう)



まだまだある


最近、私が気づいて動向を注目しているのは、『英会話』だ。スカイプ等のネット系の安価な通信手段によって、フィリピン人を講師として、英会話をやろうというプランがすごい。ネットで検索するとすでに沢山のコースが用意されていることがわかる。例えば、『レギュラーコース   600円 (25分)フリーカンバーセーション 300円 (25分)』という類いだが、実際に英会話コースを日本で受講された人なら、これが如何に安価かわかるだろう。もちろん、内容や講師の質やアクセント(フィリピン英語は一般にかなりなまりがある。但し、私の経験では、大学進学者の発音はあまり違和感はない。)これは、既存の英会話コースを運営する側にとっては相当な価格破壊の脅威となるだろう。


意外なところでは、スポーツクラブがある。最近既存会員、新規入会とも減少に歯止めがかからないそうだが、インストラクターの間では、任天堂Wiiに顧客を奪われており、その影響は大きいとされているそうだ。


異種格闘技よりもっとルール無用?


このような状況を称して、ボストン・コンサルティングコンサルタント御立尚資氏や内田和成氏らは、異種格闘技という言い方をされているが、今はその状態をさらに超えていると言って良さそうだ。異種格闘技であれば、少なくとも事前にルールが決められる。格闘家は本来のルールとは違うところで戦う必要があるが、少なくとも途中でルールが変わる事もなければ、試合中に他の格闘家が乱入することもない。それに比べると今市場で起こっているのは、ルールは勝手に変えられる、すでに企業どうし争っているところに突然、乱入する、味方が他者と突然タッグを組んで襲いかかってくる。何でもありだ。



最も被害が大きそうな既存大企業


もちろん、こういう状況の中では、『今までそれなりに成功してきたが小回りが利かなくなっている企業=多くの既存の大企業』が最も被害を大きく被ることになる。そして、柔軟で、スピード感のある企業がますます有利になる。だが、それだけではだめだ。今度こそ、『ビジネスモデル合戦』、『経営力合戦』となる。既存のルールの勝利の方程式が役に立たないということは、既存の大企業に所属する人が、最もその準備が遅れる恐れがあるということだ。自分でも経験があるから言わせていただくが、特に今既存の大企業にいる人は、個々人が自覚して新しい時代に備えておかないと、本当に大変なことになると思う。



崩壊のエネルギーがたまってしまった


そうはいっても、まだ本格的な嵐はやってきていない。しかし、ほとんどの日本企業は、バブル後の失われた10年の間に本当の意味での構造改革はできなかった。その結果、構造的に海外企業にはもはや勝てないと思われる企業、歴史的使命をすでに終えたように思われる企業等を含め、ほとんど温存されたままになってしまった。しかも、日本企業がこぞって外資への門戸を基本的には堅く閉ざす方向に力を使った結果、企業の国際競争力はかえって弱体化している。もはやダムの水は異常に水位が高い状況になってしまっている。そして今、あちこちでダムに穴があき始めた。


もうすぐ出番?


前回のブログで書いた事を繰り返すが、大きな混乱とチャンスの時代が来る。組織とは関係なく自分のスキルを磨いている人、若々しい改革のエネルギーに溢れた力を求めて人脈を広げている人、既存のルールや常識にとらわれず真の戦略眼を磨いている人など、今はあまりの停滞感に苛立ちは大きいと思うが、社会が『閾値』を超えるのはもうすぐだ。時代はそういう人に微笑むことはもはや疑いない。