『常識』ではもうだめだ!

否常識/脱常識


『33人の否常識』*1という本がある。アメリカのビジネス書ベストセラー作家33人が、型破りな発想術72個を披露し、読者の固定観念をやぶってくれる、というふれこみだ。この本の編集はご存知マーケティング界のカリスマ、セス・ゴーディンだし、33人の中には、史上最高のビジネス書のベストセラー作家と言われる、トム・ピーターズ、最近日本でも『ハイコンセプトのを考えだす人の時代』で有名になった、ダニエル・ピンク、ナイキの元エバンジェリストであるケヴィン・キャロル等の名前も見られる。


33人がバラバラに書いているので(ただし、だれがどこを書いているかは明かされていない)、ただ、この本のタイトルにあるとおり、全体を貫く共通のコンセプトは、本のタイトルにある『否常識』ないし、『脱常識』だ。常識的であってはもうだめだ、という叫びに満ちている。


プロローグにはこうある。

P21
かつては、商品が人目に触れさえすれば、95%成功と言えた。良い品を、納得のいく価格、信頼できる方法で提供すれば、それで良かった。加えて、地域性、長年の実績、品質、個人的なサービスも、ものを言った。しかし、今は違う。満足させるだけでは、もはや足りない。今は、どんなものでも十分な水準を満たしているからだ。現代人の要求はどんどんエスカレートし、非現実的な域まで達している。(中略)今日の消費者は、満足の行く品質はもちろんだが、あっと驚かされたいと願っているのだ。


P23
常識を破るか、見過ごされるか。要はこれに尽きる。


P25
まずは、型破りな組織を作り上げなければならない。『ビッグ・モー(世の中の常識を覆してしまうような革新的なアイデア)』が定期的に現れるような企業文化をつくり出すのだ。


まじめに目の前の仕事に取り組んで行くことが結局人生を成功に導き、道徳的にも正しい生活がおくれる、という信念は、アメリカでも日本でも根強いし、その信念こそが、勤勉哲学となり資本主義成立のエネルギーの供給源だった。そうではなくなった現在、道徳、モラルはどのように変化するべきなのだろうか。ミクロではともかく、マクロでは大変な意識改革が必要な大問題だと思う。にしむらひろゆき氏はトリックスターでありえたとしても、ロールモデルにはならないのではないか。より、商人型の道徳意識が社会のスタンダードとなっていくはずだ。日本の歴史の中では、明治初期のように、武士に安住が許されず、髷を切って、刀をおいて、商人として世界に雄飛したようなメンタリティーが望まれるところだろう。


本の中から、私がとても気に入った部分をいくつか抜粋してみたい。中々に辛辣だ。ただ、しばらくは座右の銘としてもいいかもしれない。



普通は生残れない

人は言う。『よい商品のどこが悪いのか』私は言う。『ウォルマートや中国、あるいはその両方が、今にもあなたの食い扶持を横取りしようとしている。なぜ、かわりにめくるめく体験をしようとしないのか。』


人は言う。『深呼吸して。落ち着いて』私は言う。『同じことをウォルマート、中国、インド、デル、マイクロソフトに言え』(今なら、グーグルに言えというのが一番しっくり来るかもしれない。*2


人は言う。『善良な人間が必要だ』私は言う。『風変わりな天才が必要だ』


人は言う。『鋼のような意思を持ち、改善できますと断言する人が好きだ』私は言う。『マニアックなまなざしと、ともすれば不適な笑みをたたえながら、世の中をひっくり返してみせる。見てろ!という人が好きだ』


人は言う。『市場シェア』私は言う。『市場創出』



人は言う。『改善と維持』私は言う。『破壊、そして再出発』



人は言う。『普通』私は言う。『風変わり』



人は言う。『欠陥無し』私は言う。『一つや二つくらいの失敗をしない一日など、無駄な一日だ』



人は言う。『時代は変わっている』私は言う。『すでに何もかも変わってしまった。明日が革命初日だ。さもなくば・・・破滅だ』



人は言う。『大風呂敷を広げているだけだ』私は言う。『現実を述べているだけだ』

*1:

常識破りの組織に変える 33人の否常識

常識破りの組織に変える 33人の否常識

*2:風観羽注