マネタイズ・チャンス

ブログは書籍化できる!


湯川鶴章氏のブログのエントリー、『ブログの書籍化普通にあり』に触発されて考えてみたことを書いておきたい。

http://it.blog-jiji.com/0001/2008/04/post_4820.html

「ネット上で情報を流すと紙に印刷した情報が売れなくなる」ー。2000年ぐらいから、従来型メディア企業の人のほとんどがこう考えていた。


今でもそう考えている人は少なくないように思う。だが、湯川氏が指摘されるとおり、その『常識』は『事実』によって、崩れつつある。



中島聡氏の「おもてなしの経営学 」や海部美知氏の「パラダイス鎖国 」はブログで一度書かれた内容を書籍された本だが、売れ行きは好調のようだ。 私自身この2冊とも読んでみたが、非常にコンパクトにまとまって、内容も実に面白い。湯川氏同様、私もお二人のブログはしばし拝読するが、読んでも忘れてしまうことも多い。本はエッセンスが整理されて並んでいるため、ブログで断片的に理解したことより、もう少し違ったコンテキストを読み取ることができた気がする。 お二人のおっしゃりたいことの全体像が把握しやすいのだ。友人にすすめるにあたっても、ブログもさることながら、まずこの本を読んでみることをアドバイスすることになると思う。 



アテンション・エコノミー


これは、情報の過剰流動性が問題になってきているWeb2.0の時代には、情報発信以上にアテンションの重要性が高まるという議論、すなわち『アテンション・エコノミー』の事例の一つなのではないか? 


アテンション・エコノミー』に関しては、Heartlogicさんのエントリーに読みやすくインデックス化されているのでお勧めだ。

http://www.heartlogic.jp/archives/2006/03/attention_economy.html


いくつか引用すると、イメージを掴んでいただけると思う。

パソコンはどんどん安くなるし、情報はどこからでも無料で手に入る時代になって、一番貴重なのはAttention=興味。

現代は、あまりにも多くの情報があふれており、人や企業はあなたのアテンションを求めて、熾烈な競争を繰り広げています。アテンションのマネジメントは、最も重要な業務のひとつになっているのです。

より多くの情報が、より少ないアテンションをめぐって競争するというトレンドが、このまま永久に続くとは考えられません。最終的には、人々はアテンションをむさぼる環境のストレスから逃れようとし始め、情報提供者は量ではなく質に焦点をしぼり始めるでしょう。生計を立てるのにアテンションを必要としない人にとって、はるかに静かな環境になります。


ブログの全体を読むことに取り組めば、本を買うお金をセーブすることは可能でも、貴重な自分の時間をより多く使うことになりかねない。しかもその時間をもっと有効に活用できたかもしれないという意味で、機会損失まで生じることになりかねない。 (と考える人は十分な規模存在したということになる。)


しかも本という『物』になることで、店頭での露出、新聞や雑誌のような従来のメディアでの広告等、アテンションを引き付けるための『場』は拡大する。広告宣伝費を余分にかけることにはなるが、ブログの人気度/知名度等により、事前市場調査がある程度できているわけだから、リスクのハードルは低く、費用対効果も高いだろう。 確かに良くできたビジネスモデルではある。


アテンションエコノミーがインターネットとともに語られるときには、優れた検索エンジンとかブックマーク等のハイテクの議論となりがちだが、少なくとも現段階では、紙媒体によるアテンションエコノミーも立派に成立しているようだ。



さらなるマネタイズ機会


この延長上で考えれば、リアルの出会い、すなわち、各種のオフ会、セミナー、講演会、コンサル等にもビジネスチャンスがありそうだ。(というより、すでにセミナー開催等は非常に多くなっていると聞く。) インターネットの普及により、ネットでのコミュニケーションでほぼ完結するようになると、かえって対面でコンパクトにまとまった、アテンションを引く情報提供(ないし情報相互交換)は価値が高くなる可能性がある。


少々意外なところにあるマネタイズ機会だが、同様にネット(ケータイ電話)で書かれたものを本にすることで成功している、『ケータイ小説』は、一見似ているように見えて少しモデルがずれているかもしれない。書籍化された作品も、いつでもケータイからアクセスできるように公開されているため、いつでもどこでもただで読める。だが、本も売れている。しかも、魔法のiらんどの分析では、ケータイで読んだ本を記念品のような気持ちで購入する人が多いのだそうだ。『共感できる仲間が書いた本だから』『思いでに大切に取っておきたい』という感覚で本を買うという。狭義の合理性では読み切れない、マネタイズ機会というのがあるものだと思う。


先入観を捨てて、真摯に取り組めば、意外なところにビジネスがある。この意外性の発見ができるかどうかが鍵のようだ。