インターネットのトレンドの全体像を把握するには?

インターネットで起きていること、これから起こるであろうことを正しくに把握することは簡単なことではない。時として、業界内に働く人と話をするときほどそれを感じることがある。 


インターネット内で起きることのスピードはとにかく早い。たとえば書籍だけでこれを把握しようととしても無理というのもだ。ある問題をその時点でかなり性格に把握して、すばらしい見解をまとめそれを出版したとしても、出版されるまでの間にトレンドが極端に変化して、もはや書籍に書かれたことが全く陳腐化してしまうということは珍しくない。(この一年くらいの間では、セカンドライフについて書かれた書籍の一部にその実例を感じる。) まして、出版されてからある程度時間の経過したものは、その時点での出来事、周辺環境を覚えていて、その前提での見解を読み解くという作業なしには、まったく意味をなさないことが本当に多い。(もちろん、これはインターネット内で起きていることだけに限る必要はないのかもしれない。) 


よく、断片的な情報だけで全般を推測することを揶揄して、ゾウの体の一部にさわってゾウの全体を言うことをおかしさを例にひくが、インターネットをゾウにたとえるといわば、ゾウ自体がどんどん進化(変化)していくのだから、これはたまったものではない。過去にさわったインターネットゾウはもはや過去の参考情報でしかないのだから。 


業界内で働く人たちは確かに、一般のインターネットにあまり接していない人と比較すると、多くの情報と経験を持っている。そのスピードが早いこともあって、普通の人と業界人の情報格差自体はどんどん開いて来ている。 問題は、その状態で自分が持っている情報を優越意識とともに過信してしまうことだ。なまじある時点でのある問題の詳細に通じているだけに、思いこみも激しいということがよく起こる。 だが、全体を把握するということに関しては、断片に固執することはしばし致命傷だ。何せ、相手は日々進化を遂げている怪物、インターネットゾウである。


さらには、インターネット時代のもう一つの特徴として、自分と同様の考えや志向を持つ人を見つけやすく、その人たちとだけの小コミュニティーをつくることができるが故に、異なった意見をぶつけて切磋琢磨することはむしろおきにくくなっているという指摘もある。 では、全体を把握するにはどうすればいいのだろう。 全体を把握する事ができる人がいわば希少資源となるのなら、ビジネスのチャンスも本来大きいはずなのだ。これこそ、今の時代の成功の秘訣と言っていい。


最近は、過去に起きたことから、単純に将来を予測しようとしても、うまく行かないことが多い。それこそ予測ということ自体をやめて、結果をインターネットで聞いて対処しながら改善するほうが正しい手法になりつつある。インターネットがない時代を生きた私たちは、将来のことを予測するためには、歴史を勉強することが大切と教わった。長い歴史の風雪を経た知恵は結局のところ一番役立つことが多い。そう教わってきたし、事実それを実感することも多かった。 ただ、今の若い人にそれを話すことはすごく難しい。それはそうだろう。自分でもうすうす疑念を感じることもあるのだ。



将来のトレンドを知るという点では、梅田望夫は、『技術の中から未来を見ることができる人たちの言葉を徹底的に読む』ということを続けて来られたのだそうだ。そして、その集大成が出版されている。

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!


この話を読んで、私は歴史学者のアーノルド・トインビー著作を読んだ時のことを思い出した。誰を選択するか、という問題はあるが、どういうわけか透徹した視界を持つ人物はいるもので、その先達達の肩を借りることは時に非常に有効だ。それはインターネット時代になってもエッセンスは変わらないと思う。そもそも歴史を勉強することは、過去の事例をデータベースのように自分の頭に蓄積して、検索データを豊富にすることが目的ではない。ある現象が起きたときに、次に何がおきるのか、その直感を磨くためにある。そこに全体性を把握できるようになるためにはどうすればいのか、という問いへの答えの一端があると思う。