新しい活字文化?
前回、『文章を書くこと』についてコメントを書いた後、『ケータイ小説がウケる理由』という本を読んだら符合する内容を見つけた。
- 作者: 吉田悟美一
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: 新書
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この本自体は、急激に存在感を増している、ケータイ小説の概況とその分析を取り扱っており、ケータイ小説をきっかけとして、10代の若年層の心象風景から、さらには大きな文化現象が起きていることを明らかにする良書だと思う。
ただ、私がこの中で特に印象に残ったのが、10代を中心としたケータイを使いこなす若年層に、文章を読み書きする習慣が根付き、独自の発展を遂げているという部分だ。
同書P184より
10代の若年層の人たちにとってメールはとても重要なコミュニケーション手段になってきています。1日に50通以上のメールのやり取りをしています。・・・最近の調査で、『5分が長電話と感じる』というデータがあります。伝えたいことをメールで伝えることのほうが、電話より圧倒的に多くなってきているのです。・・・メールをする頻度が高くなったことで、文字やテキストを扱う頻度が、圧倒的に増えました。・・・気持ちや感情を伝えるための手段として、会話よりも文字やテキストを使いことのほうが多くなり、ケータイ・メールをベースとした作文スキルが10代を中心として上がってきていると言えるのです。
印刷手段が発明されたとき、電話が発明されたとき、それぞれ短にコミュニケーションの手段が広がったというだけではなく、人々の表現手段を変革し、人と人との係わり方を変え、今まで気づくことにのなかった気持ちや感情を見つけるということが起こってきたわけだが、それと同種のことが起きつつあるのではないか。
戦後、活字文化というのは一貫して衰退してきたと言ってよいと思うが、ここに来てその流れが思わぬ形で逆転する兆しがあると言えるだろう。ただ、それは従来の活字文化の延長にあるのではなく、いわば活字の新しい使い方とでもいうべきことが起きている。絵文字やギャル文字まで入れれば、まったく新しい表現手段、新しい言語とさえ言える。
Web2.0により、総表現社会が到来したと言われるが、ケータイ文化の進展は明らかに日本で世界に先駆けて起きている特殊現象で、実に興味深い。最前線にいることをメリットと考えて、もっと探求してみたいものだ。