変貌する中国と日本の差は広がるばかり
◾️激変する中国のイメージ
昨今では、経済であれ政治であれ、何がしかを議論する場では、
先日、あるイベントに参加して、
もちろん、日本の識者の中にも、
◾️起きている現象の意味をどう理解するか
昨年(2018年)に、
[FT]テンセント、中国の電子決済でアリババ猛追 :日本経済新聞
だが、その現象の意味の理解は人によってかなり違う。
よって、日本では、日本在中、
◾️日本の金融業界を中国企業が席巻する近未来
このあたりの事情を語るのに、先ず、
日本の金融が中国フィンテックに制覇される日 | 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る | ダイヤモンド・オンライン
昨今日本の大手銀行も危機感を持って取り組むようになったいわゆ
The Top 10 companies in the 2017 Fintech100
Ant Financial - China
ZhongAn - China
Qudian (Qufenqi) - China
Oscar - US
Avant - US
Lufax - China
Kreditech - Germany
Atom Bank - UK
JD Finance - China
Kabbage - US
「アリペイ」と「ウイーチャットペイ」は、
加えて、この大量の会員をベースに、インターネット保険、
資金力も半端ではない。
さらには、フィンテックを支える人材についても、
Top Computer Science in the World | US News Education
野口氏の今回の記事にはないが、
スパコン「TOP500」、中国がランクイン数トップに--HPCG指標では「京」が1位 - CNET Japan
こうして並べてみると、今の情勢では、
◾️成果をあげる国家戦略
中国躍進の背景には、
スパコン「TOP500」、中国がランクイン数トップに--HPCG指標では「京」が1位 - CNET Japan
中国の人工知能技術が、米国を追い抜く日は近い? (1/4) - ITmedia エンタープライズ
BBCニュースによると、
アリババのAI、成績が人間上回る-スタンフォード大の読解力試験で - Bloomberg
◾️中国の情報戦略と西欧先進国のジレンマ
第三世代のAIに必須の要件とも言える「情報」
アリババは、米国のアマゾンと同様、
超巨大な顧客データベースを構築しているが、これが、 アマゾン以上に情報密度が高く統合された信用度採点のデータベー スとなって来ているようだ。
BtoCの購入代金や公共料金支払いの履歴から始まって、
個人の同意を得て学歴・職業・ 交友関係などのデータベースを紐付け・統合して、 どれくらい信用度が高い人かを950点満点で採点する仕組みだ。
700点以上の高得点者になると、様々な恩典が付与される。
最初はホテル宿泊時のデポジット手続きが不要、 優待料金といったものだったが、 政府がこの仕組みに相乗りし始め、 北京空港のセキュリティチェック専用レーン通行権、 シンガポールやルクセンブルグのビザ支給など魅力的な恩典がリス トに加わったため、 中国では多くの人がこのシステムに登録するようになった。
中国のように、自分たちの一族以外には「信用/信頼」
中国政府自体もこれと同様、巨大データベースによる「
繰り返すが、今までの中国の最大の問題の一つに、自分たちの一族以外には、
この情報という点では、
一方、現代のプライバシーに関わる思想は、
実は人権侵害だらけだった日本
欧州が日本に「人権条項」要求・・・実は人権侵害だらけだった日本 - NAVER まとめ
男女平等ランキング 日本116位
【国際】世界「男女平等ランキング 2016」、日本は111位で昨年より後退。北欧諸国が上位独占 | Sustainable Japan
報道の自由ランキング 日本72位
グローバリズムが浸透してきて、
◾️思考停止している場合ではない
日本人にとっては目を背けたくなるような状況かもしれないが、
*1:
- 作者: ジョージ・オーウェル,George Orwell,新庄哲夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1972/02
- メディア: 文庫
- 購入: 16人 クリック: 299回
- この商品を含むブログ (271件) を見る
2018年とそれ以降をどう予測すればいいのか?
■ 2025年くらいまでをどう予測するのか
2018年が明けた。昨年後半は特に、
将来の見通しを聞かれたとき、最近いつも答えているのは、「
■ 変化のスピードが対応能力を大きく上回っている!
「フラット化する世界」*1の著者、トーマス・フリードマン氏は最新の著書、「Thank you for Being Late」*2 でこの問題、すなわち技術の進化と社会の需要の問題を取り上げている。1000年前までは、人間が何か新しい生活習慣を身につけるのに、2〜3世代(約100年)の時間が必要だったが、 1900年代以降、一世代(
しかも、このスピードアップはこれからが本番だ。そして、その程度も、範囲も、規模も、どんな識者にも、専門家にも最早予測不可能となりつつある。世界中で不安の渦が大きくなるのは当然だ。社会が受容するためには、ある程度の時間が欲しいと誰もが感じているはずだし、それは人間社会にとって当然の要求ではある。だが、その一方で、社会で受容が遅れることは、その社会(国)の企業が競争に負けることに直結するから、とにかく早く受容しろという企業側(場合によっては国家)からのプレッシャーが強くのしかかることになる。ところが、企業が競争に勝っても、米国が典型例だが、企業と富裕層(上位1%)の資産を増やすことには貢献しても、その他(99%)にその恩恵が及んでくるどころか、仕事が海外に流出したり、IT技術やロボット等による省力化で仕事が奪われてしまったりする。
■ 驚くべき2017年の米国の実情
In Deepというブログで、今年 1月1日に、米国の人気ブログ「エコノミック・コラプス・
数字からわかる「狂気じみていた2017年」。そして、おそらくはこの狂気は今年も継続する | In Deep
44 Numbers From 2017 That Are Almost Too Crazy To Believe
内容を見ると、一方で先端技術が浸透していることを示す内容がある。
2. ビットコインの価格は 2017年に 1,300%以上も上昇した。
14. 2017年のある時点で、すべての暗号通貨(ビットコイン、リップルなどの仮想通貨のこと)を合わせた時価総額は、5000億ドル(55兆円)を超えた。
その一方で、先端技術や先端技術を駆使する企業等の影響によって、
6. アメリカでの小売店閉鎖件数の記録は、2017年に壊滅的なものとなった。最新の数字によると、2017年は、アメリカで 6,985の店舗が閉鎖された。 2018年も同じペースでアメリカの小売店の閉鎖が起きると予測されている。
7. 信じられないことに、2017年のアメリカ国内の小売店閉鎖件数は、2016年に比べて 229%増だった。(TEC)
10. 最新の数字によると、現在 4,100万人のアメリカ人たちが貧困状態で暮らしている。 (TEC)
24. 超自由主義的な都市であるシアトルでホームレス状態が拡大しており、市の周囲には 400の無許可のテントキャンプが出現している。
25. 2017年に実施された調査では、アメリカの全常勤労働者のうちの 78%が給料ぎりぎりのその日暮らしをしていることがわかった。
26. 米連邦準備理事会(FRB)によると、アメリカの平均的な世帯は現在 13万7,063ドル (約 1500万円)の負債を抱えており、その数字は平均世帯収入の2倍以上だ。
31. ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ウォーレン・バフェットは、その3人の資産だけで、アメリカの最も貧しい人口の 50%の資産すべてを合わせた以上となる。
32. 2017年の時点で、アメリカすべての世帯のうちの 20%は、「資産0、あるいはマイナス資産」となっている。
39. すべてのアメリカ人のうちで 1万ドル(110万円)以上の貯蓄をしているのは 25%にしか過ぎないことが報告された。 (TEC)
40. 連邦準備制度理事会が実施した調査によると、アメリカのすべての成人のうちの 44%は「予想外の 400ドル(4万5000円)の出費をカバーする」ことのできる資金を持っていないことが分かった。
極めつけは、これだ。
44. 調査によると、今、アメリカ人の 40%が「資本主義より社会主義のほうが好ましい」と考えていることが判明した。 (michaelsnyderforidaho.com)
どのような状況でこのアンケートが行われたのか、
トランプ大統領は、
米国の例は極端ではあるだろう。だが、
■ 物理インフラシフトの本格化/エネルギー革命
2018年が社会の大きな混乱が顕在化してきそうと考える理由に
第二次産業革命によって出来上がって来たインフラ、
これまでは、デジタル革命=情報革命と見なされがちだったが、
エネルギー革命の本格化ということになると、
ただ、これは日本経済にとって悪いことであるどころか、
繰り返すが、
■ 常識にもイデオロギーにも捕らわれない態度
問題はこれをどのように解決していくのか、あるいは、
例えば、米国で言えば、この国の富の偏在が社会に及ぼす影響は、
一方で、中国の習近平国家主席など、
このごとく、従来のイデオロギーや思想、
*1:
- 作者: トーマスフリードマン,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/01/19
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 119回
- この商品を含むブログ (111件) を見る
*2:
Thank You for Being Late: An Optimist's Guide to Thriving in the Age of Accelerations
- 作者: Thomas L Friedman
- 出版社/メーカー: Fsg Adult
- 発売日: 2016/11/22
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
*3:
限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
- 作者: ジェレミー・リフキン,柴田裕之
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/10/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る
世界を理解するための入り口?「カイロ大学」
■ 今は必要ないのか、今だから必要なのか
敬愛する著述家で冒険家でもある田中真知氏がブログでとある本(「カイロ大学」*1 )を紹介しているのを見て、ハッとした。今、この切り口(エジプトのカイロにある有名大学に関する著作)が非常にタイムリーだと感じたからだ。少なくとも、今の自分にとっては、この角度から中東問題を見直してみることが、この複雑怪奇な問題の理解を深めるために(というより、少しでも理解に近づくために)非常によい切り口になるであろうことを直感した)。
といっても、ほとんどの人には、私が何を言いたいのかわからないだろうし、そもそも、大半の日本人にとって、カイロ大学と言えば、小池百合子東京都知事の出身大学としての印象くらいしかないだろう。(それさえもピンとこないかもしれない)。だから、この本の企画が商業的に有効だったのは、小池氏が都知事に当選したころ、あるいは、先の総選挙で小池氏が「希望の党」を立ち上げて国民が一時的に非常に盛り上がり、政権交代の騎手となるとの幻想がかきたてられた時期までなのでは、と思われているはずだ。まあ、実際だれが考えてもそうだろうから、小池氏の賭けが失敗に終わり、あれほど膨らんだ期待も萎みきったばかりか、残るのはネガティブなイメージばかりということになれば、本書のセールスにも悪影響しか残っていないのではと、訝ってしまう人の方が多いのも無理はない。
それ以上に、9.11同時多発テロ、イラク侵攻、「イスラム国」が急速に膨張していた頃等であれば、もっと切迫した意味で日本人にも、カイロ大学で行われている教育や、卒業生の思想について知りたいというニーズがあったようにも思える。というのも、この大学は、これらの事件に絡む著名な人物を数多く輩出しているからだ。だが、イラクにある「イスラム国」の拠点の中心部を政府軍が奪回したというニュースが流れたのは8月のことだが、喉元過ぎれば熱さをすぐ忘れてしまう日本人は、あれほど大騒ぎした中東の騒乱に対しても、そろそろ関心が薄れかかっているように見える。(少なくともそのような空気が支配的だろう)。そういう意味でも、今がセールスに適正な時期とは言えないし、読むべき必要性があるとも思えない、というようなことを、「空気がよめる」普通の人のなら言うのではないか。
だが、そのような空気がどうあれ、中東問題は本当にもう沈静化したのだろうか。事実はその真逆だろう。世界はトランプ大統領という旧来の常識が遠く及ばない怪物に掻き回されていることもあり、中東問題もこれまで以上にこじれつつある。次の暴発がいつどこで起きてもおかしくない。例えば、トランプ大統領は、オバマ大統領の時代のイランとの核合意破棄を宣言したり、つい最近でも、イスラエルの首都をエルサレムと宣言した。これを受けて、パレスチナ自治区や、中東、アジア等でのイスラム教徒の抗議デモが沸騰している。
■ 世界を理解したいという渇望
一体今後の世界をどう理解すればいいのか。中東問題に限らないが、これまで積み上げられてきた政治の常識はもはや通用しない。出口の見えない不安感は、日本でも非常に大きくなってきている。それに呼応する現象と考えられるのが、2017年に思想書等の硬派な人文書が非常によく売れたことだ。小林秀雄賞を受賞した思想家の國分功一郎氏による「中動態の世界 意志と責任の考古学」*2、毎日出版文化賞を受賞した哲学者の東浩紀氏の「ゲンロン0 観光客の哲学」*3はじめ、非常に印象に残り、しかもよく売れた名著が数多く世に出た。書籍や雑誌全体の売り上げが激減している中、ちょっとした事件と言っていいレベルだ。世界を根本的に理解し直す必要がある、そういう渇望は実のところ今とても大きくなってきている。本書(「カイロ大学」)はその渇望に連なる需要の一端を満たす切り口を持つように思えるのだ。
■ 混乱と闘争に生き抜く強さ
あらためてカイロ大学の出身者で、テロに関わる重要人物を列挙してみると、これが本当にすごい。
オマル・アブドゥルラフマン(世界貿易センタービル爆破事件の首謀者)
モハメド・アタ(アルカイーダのテロリスト。同時多発テロの首謀者/実行犯)
アイマン・ムハンマド・ラビーウ・アッ=ザワーヒリー(アルカイーダの最高指導者。)
サダム・フセイン(元イラク共和国大統領)
中田考(イスラム法学者。「イスラム国」に戦闘員として参加を希望する日本人学生に、「イスラム国」司令官に参加を仲介。但し、中田氏がテロリストというわけではなく、中立的な第三者の立場。)
マハムード・アルザハル(イスラム主義組織ハマスの共同創設者)
これだけ並べると、まるでカイロ大学というのは、世界のテロリスト養成大学のように見えてしまうかもしれないが、一方で平和運動に貢献した人物も数多く輩出している。
プトロス・ガリ(アフリカ初の国連事務総長)
ヤセル・アラファト(元PLO議長。ノーベル平和賞受賞)
ムハンマド・エルバラダイ(元IAEA事務局長。ノーベル平和賞受賞)
ワエル・ゴニム(2011年エジプト革命に貢献。ノーベル平和賞候補)
アハマド・マヘル(エジプト民主化運動の若きリーダー)
著者の浅川氏が述べているように、カイロ大学は、世界で一番「混乱」に強い卒業生を輩出する場所となっていて、実際にそれを卒業生が実証して見せてくれているように思える。ここに列挙された錚々たる人物を見ると納得がいくはずだ。また、カイロ大学は「中東のハーバード」とも「混乱と闘争で生き抜く強さで世界一」とも言われているというが、後者の「価値」こそ、今後の世界で何より重要視されて行くに違いないと考えるのは私だけではないはずだ。
■ 命がけのアイデンティティの探求
本書で私が特に印象的だったのは、歴史的にこの大学の教職員や学生が苦闘し、模索している自らのアイデンティティの探求だ。
アラブ人
世界的な文明発症の地としてのエジプト人
イスラム教徒(スンニ派、シーア派、その他)
西洋主義
軍閥ナショナリズム
エジプトだけではなく、周囲の国々からの優秀な留学生を迎え、激しい議論の応酬を繰り広げる。そのような環境の中から、感染力の強い思想を練り上げ、優秀なリーダーが育ち、国を超えて連帯していく。しかも単なる抽象度の高い「遊戯」とは正反対の、生死をかけた闘争の中でこれが行われている。昨今話題になった日本の学生のデモをこれに対比させるとその違いは明らかだろう(SEALDsとは何だったのか、カイロ大学での政治活動との対比で考え直してみることも有効に思える)。
それは、外側からでは、全く理解も想像も及ばない何かだ。本当に理解したければ、内側にいて、この場を体験すること、すなわち実際にカイロ大学のような場所に身を置くことだろうが、せめて、カイロ大学という切り口で、ここで起きていることを理解する努力をしてみるというのは、一つのきっかけになるように思える。本書を読むとその入り口が開いていることを感じることができる。
日本から海外の大学への留学生は著しく数が減っていると言われて久しい。それは、日本という国にとって、やはり本当に危機的なことであることを、あらためてひしひしと感じてしまうのも、ある本書を読むことの「意味」の一つと言えるかもしれない。
■ グローバリズムの世だからこそ
グローバリズムというと、世界のルールが統一され、文化の差異が目立たなくなり、世界が均一の場所となることをイメージする人は今でも少なくないが、残念ながら、それは大変ナイーブな幻想というしかない。ルールが取り払われて、人の交流が増えた結果、実際に起きたことは、こういう場でこそ人は自らのアイデンティティを意識し、ちょっとした違いに敏感になり、その結果紛争も増えるということだ。だから、繰り返すが、そのような紛争や混乱に強いことの重要性は今後ますます高まって行く。カイロ大学に実際に行くかどうかは別としても、もっと理解を深めていくことの意義は特に今の日本人にとって大きいと思う。
*1:
- 作者: 浅川芳裕
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2017/12/09
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る
*2:
中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2017/03/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (20件) を見る
*3:
- 作者: 東浩紀
- 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
- 発売日: 2017/04/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (45件) を見る
AI(人工知能)で本当に勝てる企業とは?
■ 具体的な戦術に落とし込まれているか
AI(人工知能)等の新技術は、昨今、経営者なら誰でも口にするような(というより一応口にしておかないと恥ずかしいとみなされるような)バズワードになってきた。この技術の本当の意味もわかりもせずに口にする人が大量に溢れるようになった現状を横目で見ていると、次に起きることを言い当てることができる気がする。おそらく、遠からず「言葉の過剰」のバブルは弾け「実際の達成」との落差に愕然とすることになり、多くの人が失望の憂き目を見ることになるだろう。だからといって、AIが企業の競争戦略上無用ということではなく、むしろまったくその逆だ。この時点で、AIによって勝つ企業と負ける企業が峻別されていると考えられるからだ。勝ち残る企業であるためには、現時点で漠然と口にしているようでは話にならない。AIを自社の競争力向上のために、どのように応用していくのか、どのような準備を進めて行くのか、というような具体的な戦術に落とし込まれているようでなければ手遅れだ。少なくとも手遅れになる可能性が高い。
そういう観点で少し冷静に市場をウオッチしていると、大半の日本企業が具体性どころか、方向喪失して右往左往している様が見えてくる。例えば、その典型例が、自社の方向性も決まっていないのに、いきなりAIを専攻したエンジニアを採用しようとしたり、自社のエンジニアにAI講座を履修させたり、経営者が具体的な事業プランもなくシリコンバレーの有力企業を表敬訪問するようなことだ。もちろんそのような行動自体がまったく意味がないとまでは言わないまでも、そのレベルで止まってしまっている企業は、断言してもいいが、「来るべき選別の時」を乗り切ることは難しい。
■ 正しいデータ戦略推進が鍵
では、その選別の時を乗り切ることのできる企業はどんな企業なのか。生き残る企業の共通点として指摘できる特徴はあるだろうか。私が考える共通点は、「正しいデータ戦略を推進していること」である。
先日、最近は IT批評家として幅広く活動している、尾原和啓氏による、News Picksの有料記事の寄稿の一節が、かねてから私自身述べていた論旨に非常に近いため、我が意をえた思いをした。 尾原氏はAIの強みは「データ×アルゴリズム×計算インフラ」で決まると述べる。このアルゴリズムの部分は、Googleのような米系企業が非常に強力な競争力を発揮して世界に覇を唱えていることはご存知の通りで、例えば、Google傘下のDeep Mind社が開発したAlfaGoが囲碁の世界チャンピオンを撃破して世界を驚かせたことは記憶に新しい。今やAI専攻の学生はメジャーリーガー並みの報酬で先進企業に迎えられ、激しい開発競争が繰り広げられているわけだが、ここに今から日本の普通の企業が新規参入することは極めて難しいと言わざるをえない。一方、計算能力のほうも、スーパーコンピュターや、AIチップ等の能力向上の競争に見られるように激しい競争が繰り広げられており、こちらも新規参入は難しいのが現実だ。(余談だが、例外として、日本のスーパーコンピューターの少人数で後発のベンチャーでありながら、世界クラスの競争力があって非常有望視されていた、「Pezy computing」の斉藤元章社長は、詐欺の容疑で逮捕されてしまった。事情通からは、日本は大丈夫か?という嘆きが噴出している。)
ところが、このアルゴリズムと計算インフラは、AIのビジネス利用を目論む参入者が自社開発せずとも、昨今では、GoogleやAmazon、マイクロソフトのような会社が、クラウドサービス(GoogleのTensor Flow等)の形で提供しており、プログラムを書いたこともない文系出身者でさえ、AIを使うことができるようになっているという。従って、AI利用という点では、競争力の焦点は、データ、それも、AIが育ちやすくなるような学習データが自然と湧いてくるような構造をつくることに移ってきている。これを短くまとめて尾原氏は「学習データが自然と独占できる生循環をつくること」と述べている。そして、その「3つのパターン」として、gumi社長の国光宏尚氏の発表を引用している(コストダウンの生循環、付加価値の生循環、需要アップの生循環)。
いずれも、AIによって予測・自動化ができて、付加価値が高いプロセスを見極めてAIの機能を織り込み、その付加価値があるがゆえに、利用者がそこに集まり、集まってデータの軌跡を残すから益々AIの精度があがり、付加価値も高まるという循環を意図したものだ。具体例として、Google Maps等の例があげられているが、Google Mapsが大量のデータをもとに渋滞予測をすると、その精度が高いが故にたくさんのユーザーがこれを利用し、たくさんのユーザーの情報が収集できることで、リアルタイムの渋滞を感知できるようになり、そのようなデータがあれば渋滞予測の精度が上がるばかりか、ドライバーが抜け道を使う時の情報がリアルタイムでわかるため、本道に戻す誘導のタイミングの精度があがる。そうするとさらに多くのユーザーがGoogle Mapsを使うようになる。このような正の循環の存在とメリットは、すでに実際にこのアプリを使っている人なら、誰しも実感しているはずだ(かくいう私もすごく実感している)。
■ GAFAに負けないためには
ただ、このような大規模なインフラに関わるサービスは特に、結局のところ、規模の経済がものを言うから、GoogleやAmazon、フェイスブックのような企業(昨今では、これにAppleを入れてGAFAと略称されることが多い)が市場を席巻してしまう可能性が高い。規模を大きくすることのメリットがある限り、ベンチャー企業が先行しても、企業買収等によって巨大企業がこれを飲み込んでいく力学には抗しがたいように思われる。
そういう意味で、日本の「普通の企業」が今からでも参入できて、しかもある程度成長しても、GAFAのような企業に押しつぶされないためにはどうするべきか、という条件を加味した上でなければ、結局のところ参入には現実味がないことになる。そのため、情報全般ではなく、あるカテゴリーに特化したり、日本の文化(含むサブカルチャー)を誘因の核としてユーザー投稿や視聴ユーザーを収集できるしくみをつくることが(料理レシピのコミュニティウェブサービスのクックパッドや、日本独自のオタクカルチャーを誘因の核として投稿や視聴ユーザーを集めるニコニコ動画等が具体例)、GAFAとの直接の競合を回避し、競合力を中長期的に担保する拠り所となる、ということを私のブログ記事でも何度か述べて来た。
あるカテゴリーに特化して、「プラットフォーム・オン・プラットフォーム・サービス」(アップルやGoogleのスマホのプラットフォームの上で機能するプラットフォーム等)を作り上げる、という意味では、ライドシェアのウーバー等もその代表例ではあるが、クックパッドのように、コミュニティが育つように仕掛けて、集まった熱心なファンのエネルギーを投稿のエンジン(原動力)としたり、ニコニコ動画のように、日本のサブカルチャー(オタクカルチャー)を理解してサービス設計するなど、より特定の(この場合日本のユーザー)にアピールするほうが、競争上の防壁を作りやすい。
この戦略のキーワードを並べると、「ユーザーコミュニティー」「プラットフォーム」「日本文化、習俗、思想等」ということになるが、これをうまく生かしてベストミックスのサービスをつくり、ここに、「学習データが自然と独占できる生循環をつくること」を工夫していくことが今後の日本企業の競争戦略上の一つの鍵になると考える。
■ 無印良品は優等生
ただ、困ったことに、例にあげた、クックパッドやニコニコ動画の業績が最近芳しくないようだ。それでも、クックパッドは内紛、ニコニコ動画は「画質の悪さ、重さ」が原因のようなので、ここで述べているロジックを毀損するものではないと考えられる。とはいえ、移ろいやすいユーザー心理に立脚することの難しさ、特に、安定的な収益モデルとすることの独自の難しさが露呈していることは否定できない。日本文化を背景にして成功したと評価される「ポケモン」にしても、爆発的な人気はあくまで一時的で移ろいやすいことは確かだ。
もう少し、安定的で普遍的という意味ではネットサービスではないが、(株)良品計画が提供する「無印良品」など、日本文化をベースとして、日本発世界標準として成功している典型例にあげることができそうに思える。良品計画の松﨑曉社長は、「無印良品の商品は、無駄を省いた日本的な『わびさび』なものと消費者に受け止められ、特徴を出せている」と述べている(日本経済新聞、2016年3月20日)が、確かに、そのシンプルさの中に、日本的な美意識が実現されていることを感じることができるし、市場でもそのように評価されてもいる。
(株)良品計画は、AI等のハイテクを押し出しているわけではないが、実は、このような成功の在り方にこそ、来るべき本格的なAI普及の時代の勝ち組になる前提条件が形成されている。無印良品は自らを「アナログ」と称しているようだが、実際の活動をつぶさに観察すると、「ユーザーコミュニティー」「プラットフォーム」「日本文化、習俗、思想等」のキーワードがすべて生かされていることが見て取れる。この先には、AIを最適利用して次の大きな競争上の優位につなげていく条件がそろっているように私には見える。
■ 急いだ方がいい
「正しいデータ戦略を推進していること」が重要と述べて来たが、もちろん、「アルゴリズム」や「計算インフラ」、あるいは、情報収集インフラ等の部分についても、アプローチは様々にありうる。戦略性のあるAIに対する取組み手法のほうも、まだ工夫次第で競争できる余地はある。ただ、いずれにしても、今重要なのは「正しく理解して、具体的な戦術に落とし込む」レベルまで早急に到達することだ。あまり時間は残されていない。急いだ方がいい。
日本の異界(名古屋)の持つポテンシャルを生かす未来
◾️ 日本の異界
「日本の異界 名古屋」*1
よく見ると著者は、かつて「蕎麦ときしめん」*2
◾️ 誰も名古屋には行きたくない?
名古屋ネタですでに何冊かの著作のある清水氏が、
もっとも、この調査結果は、すでに旧聞もいいところだ。この「
この結果を見て、私が一番初めに知りたいと思ったことは、「
◾️ どこよりも住みやすい名古屋
本書でまず私が注目したのは、
今、
清水氏によれば、名古屋で生まれた人たちは、
かつて、私もこの地域に住んでいたとはいえ、
◾️ 日本で一番「安心」が確保されている?
今の名古屋が相変わらずこんな様子だとすると、
だから、名古屋の地元民は、
◾️ 持続可能とは言えない
では、今後の日本が目指すべきなのは、名古屋のような場所/
繰り返すが、この議論が成立するためには、
今後の持続可能性、という一点において、正直私は悲観的だ。
そのため、今後(地方都市を含めた)
◾️ 豊田市の特殊なモデル
ただ、このような議論を展開すると、どうしても、
だが、その経営思想や文化は、先に述べたような(
◾️ 収奪から育成へ
起業家/実業家の古川健介氏は、メルマガ記事にて、
共産主義や社会主義のイデオローグが理想とした「社会設計主義」
それは、「効率」「清潔」
◾️ 今の名古屋に繋がる歴史
そのように述べると、名古屋圏はもはや変わることもできず、
江戸中期、八代将軍吉宗は、
◾️ 吉宗から宗春へ
だが、宗春の影響はしっかりと残っていて、
このように考えて来ると、
*1:
*2:
*3:
http://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/cmsfiles/contents/0000084/84816/chousakekka.pdf
*4:
風前の灯の「高品質日本」のイメージ
◾️優良企業の品質偽装事件
神戸製鋼所の品質データ改ざん事件は内外に非常に深刻な影響を与
◾日本企業の️高品質イメージを毀損してしまう
世界の市場がつながってしまった現在、
しかも、ここしばらく、神戸製鋼所と同様の日本の優良企業が、
◾️君子豹変す?
近年の、品質に関連した不正に係わった企業名を挙げてみると、
これに粉飾決算等の不正会計の事例を加えると、
東芝、富士ゼロックス、オリンパス、カネボウ、IHI、
中でも、
◾️企業トップの人災
「君子豹変す」の代表格と述べた東芝だが、最近出版された、ジャーナリスの大鹿靖明氏による「東芝の悲劇」*1は「伝統的優良企業」
企業トップの「人災」の例は、あまりにあからさまに述べると、
例えば、
「老害」経営者に蝕まれる日本企業…高収益企業キヤノンの没落、巨額買収連発も効果なし(Business Journal) - goo ニュース
財界活動を行う企業のトップの全てが問題というわけではないが、
◾️相談役/顧問の問題
また、本書によれば、東芝は03年に西室氏主導で、
およそ6割の日本企業に相談役・顧問がいるというが、
相談役や顧問が経営の役に立っていたケースは一つもない。
百害あって一利なしだ。 日本企業の中で何十年も続く先輩後輩の関係は、 ある意味で血縁以上に濃い。 自分を社長にしてくれた先輩OBには逆らえない。 OBは良かれと思ってアドバイスするかもしれないが、 自分が死んだ後のことまでは考えられない。 百歩譲ってOBのアドバイスが『会社のためになる』 と言うのなら、彼らに払っている報酬と、秘書、車、 個室にかけるコストを全て開示し、『対価に見合う価値がある』 と合理的な説明を株主にすべきだ。
このような批判を受けて、東京証券取引所は8月に、
相談役・顧問問題 本質は日本的社長選び(安東泰志)|マネー研究所|NIKKEI STYLE
中でも、特に(数が多いこともあるのだろうが)、
団塊世代の特徴
・説教大好き
・矛盾した事しか言わない
・自分はさて置き。と言う事しか言わない
・相手が反論すると直ぐ恫喝
・派閥大好き
・金に物凄く汚い
・自分の価値観を相手に押し付ける
・自分の言う事を聞かないと直ぐ排除しようとする
私は人間的にすばらしい団塊世代の人達を沢山知っているから、
しかも、評論家の常見陽平氏が指摘するように、
自分の小さな成功体験を大きく語り、
俺は若い頃凄かったと言い出す(伝説になるのが早すぎ)
『俺の頃は……』と自分の新人時代を語りだす(
勤務し始めて数年であるにも関わらず)
企画書の書き方を細かく指導する(
自分のパワポ技の凄さをアピールする。 一方で後輩が色やフォント、アニメを使いすぎると叱りだす)
自分も成長しなくてはいけない立場なのに「
あいつも成長してきたな」的な話をする。
こうなると老害というより、企業文化自体の問題であり、
このような「大企業病」に対しては、本来、それぞれの企業の若年層や中途入社者等、
◾️日本企業に決定的な敗北が迫る
だが、これも企業が生き残ることができることが前提だが、
時価総額上位企業(1992年と2016年) / グローバルでは大きな変化、日本は同じ顔ぶれ - ファイナンシャルスター
新しい企業という点では、
世界のユニコーン企業に共通する13の事実 - Onebox News
ユニコーン企業のような急成長ベンチャー企業を「
昨今では、この個別の創造的破壊企業をM&A等で飲み込み、
例えば、IT技術を使った新たな金融サービスである「
「ビジネスモデル革命」に中国が成功し、日本が乗り遅れる理由(野口 悠紀雄) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
最近では、すっかりAIブームということもあり、
◾️真の危機を見据えた対策を
ずいぶんまどろっこしい文章になってしまったが、
インドの差別との戦いは世界規模の課題を暗示している
▪️ 世界の中心に踊り出るインド
昨今の世界のビジネスシーンにおけるインドの勢いはものすごい。
その日本人の中では、少数派ということになるのかもしれないが、
だが、
▪️ インドの深層理解の鍵
その途上で、私は、
私の無知と浅学はともかくとして、
▪️ ガンジーとアンベードカル
黒人解放運動に殉じたリンカーンはじめ、
そのヒンズー教の思想の一端に触れるには、
だが、どうみても、
だからこそ、
だが、ガンジーも、
▪️ 補助線としてのベルクソンの思想
今、世界は「寛容」や「平等」
ベルクソンはそのパリで最後の時を迎えることになるが、
「人間は社会的動物である」と言われるが、
それに対して、ベルクソンは「第二の源泉」があると述べる。
ガンジーはインド社会を統合し、イギリスから独立するために、
▪️ インドから世界へ
アンベードカルは早逝するが、
これは経済的に世界の中心に躍り出ようとするインドにとっても好